埋合うめあわ)” の例文
土耳古帽氏はふたたび畠のそばから何かって来て、自分の不興を埋合うめあわせるつもりでもあるように、それならこれはどうです、と差出してくれた。
野道 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
狙ったところで、何の埋合うめあわせにもなりはしない。拙者はもうここでお別れいたすよ。江戸へ帰って寝ていた方がはるかましだ
鳴門秘帖:03 木曾の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
そしてわたしはこんな陽気な者ですから、人達に対して、あの大勢のいやな「わざわい」の埋合うめあわせをつけるために箱の中に入れられたんです。
私を棄てゝ心中するなんて、そんな奴なら了簡があります、愚図々々すれば女郎じょうろにでもたゝき売って金にして埋合うめあわせをするのだ
業平文治漂流奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
損失額は一般資本のより不利な分配によって埋合うめあわされているから、それが内国から奪い去るすべてのものを外国に与えない故にそれは最悪の課税である。
思うようになるかならないか自分にさえ予言のできかねるのが述作の常であるから、今度こそは長い間休んだ埋合うめあわせをするつもりであると公言する勇気が出ない。
彼岸過迄 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
あまりに平凡へいぼん人達ひとたちうわさばかりつづきましたから、その埋合うめあわせというわけではございませぬが、今度こんどはわがくに歴史れきしにお名前なまえ立派りっぱのこっている、一人ひとり女性じょせいにおにかかったおはなしいたしましょう。
さぞかし御退屈でござりましたろうが、此の埋合うめあわせには、又其の内にごく面白いお話をおきゝに入れるつもりでござりますれば、相変らず御贔屓ごひいきを願い上げます。
それは御気の毒様、それだからその埋合うめあわせをするために孔雀くじゃくの舌なんかを金と太鼓で探しているじゃないか。まあそうおこらずに待っているさ。しかし著書と云えば君、今日は一大珍報を
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)