)” の例文
何事か呪文の如き事を口ずさみ、交る/\天をあふぎて訴ふる様、波羅伊曾はらいその空にしませる彼等の父の不思議なる救ひの手を待ち設くる体なり。
白くれない (新字新仮名) / 夢野久作(著)
われは身の既に死して無際空間の氣海に漂へるを覺えたり。我身はまさに昇りて天にせる父のもとに往かんとす。然るに一物の重く我頭上を壓するあり。是れ我罪障なるべし。
しかもその誓約は日本でいえば弓矢八幡、八百万やおよろずの神々というが如く天にします神の御名おんなに於て厳格に約束したのである。然るに会議して帰国すれば直ちに軍備を修めて戦争の用意をしていた。
さぬ二夜ふたよ名しらぬ虫をに飼ひぬ寝がての歌は彼れに聞きませ
恋衣 (新字旧仮名) / 山川登美子増田雅子与謝野晶子(著)
し在さず定かならずも我れ思ひ人は主人あるじの無しとする家
晶子鑑賞 (新字旧仮名) / 平野万里(著)
現身うつしみの馬にてせば観世音きうすゑられてありにけるかも
雲母集 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
「天にします神様——お助けください」
神も仏もしまさぬ此世に善悪のけぢめ求むべき様なし。たゞ現世の快楽けらくのみこそ真実ならめ。人の怨み、そしりなぞ、たゞ過ぎ行く風の如く、漂ふ波にかも似たり。
白くれない (新字新仮名) / 夢野久作(著)
「あれあ神主がいう高天たかまが原たい。高天が原に神づまりしますかむろぎ、かむろぎのみこと——オ……」
近世快人伝 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
今朝けさは、いつにも似ず早く眼醒めつ。御身の此寺に近付き給へるを垣間見かいまみ、如何はせむと思ひ惑ひ候ひしが、所詮、人間道を外れし此身。神も仏も此世にはしまさずかし。
白くれない (新字新仮名) / 夢野久作(著)