とりこ)” の例文
八五郎がそう言って来たのをきっかけに、平次はこの美しい女房のとりこから解放されて、階下の一と間に案内されました。
ふまでもく、面影おもかげ姿すがたは、古城こじやう天守てんしゆとりこつた、最惜いとをしつまのまゝ、と豁然くわつぜんとしてさとると同時どうじに、うでにはをのちからこもつて
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
甘やかしもしてくれたのは何といってもその独逸の貴族だったことも、時々おもい出すものらしかったが、今は彼女もその愛のとりこに似た生活からのがれ出たよろこびで一杯であった。
仮装人物 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
「ふぐは食いたし命は惜しし」にわけもなくとりこになって、それがためにかえって目前の体験実際が物語る安全を信じられないということは不甲斐ないばかりか、非常識でもあり
河豚食わぬ非常識 (新字新仮名) / 北大路魯山人(著)
そして歳から歳へ、その課題をくりかえし採り上げては、またしても、情熱の旋風と憂愁とのとりこになるのであった。生涯の最後に到って初めてこの目的を達成することができた。
御存じでしょう、松の丸殿というのは太閤秀吉の御寵愛ごちょうあいの美人の一人なのです。あの人は、或る城主の妻でありましたが、それがとりことなって秀吉の御寵愛を受ける身になったのです。
大菩薩峠:35 胆吹の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
彼は全く新しい一団の感情のとりことなっていた。一種の憤怒を内に感じていたが、だれに対してだか自ら知らなかった。感動したのかまたは屈辱を感じたのか自分にもわからなかった。
私はもうしかたもない悲しみのとりこになってしまったのです。
源氏物語:51 宿り木 (新字新仮名) / 紫式部(著)
とりこの愛女救ふべく巨多の贖持ち來し
イーリアス:03 イーリアス (旧字旧仮名) / ホーマー(著)
八五郎がさう言つて來たのをきつかけに、平次はこの美しい女房のとりこから解放されて、階下の一と間に案内されました。
彼は一種の幻覚のとりこになっていた。彼はあたりをながめた。