ほざ)” の例文
「包み隠さず申し立てりゃあお上へ慈悲を願ってやる。なに? やいやい、まだ知らぬ存ぜぬとほざきやがるか。」
もとより口実、狐が化けた飛脚でのうて、今時いまどき町を通るものか。足許あしもとを見て買倒かいたおした、十倍百倍のもうけおしさに、むじなが勝手なことをほざく。引受ひきうけたり平吉が。
国貞えがく (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
それには自分に受負はせて呉れたら格安に勉強するとでもほざくだらうと言つたが、松山に居る独逸の俘虜で、日本の紋の研究を始めて、材料をどつさり集めてゐるのがあるさうだ。
「いうてよいことはいわず、いえばいうほど苦しむことをまだほざくか」
三国志:05 臣道の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
わらわにかばかりの力あらば、虎狼とらおおかみの手にかかりはせじ、とほざいた、とな。続いて三年、毎年、秋の大洪水よ。
天守物語 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
ほざきそうな。これがさ、峠にただ一人で挙動ふるまいじゃ、我ながらさらわれて魔道を一人旅の異変なてい
星女郎 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
勝手な事をほざくうちに、船の中で胡坐あぐらに成った。が兎がかいを押さないばかり、狸が乗った形である。
浮舟 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
と、親仁がもっともらしい顔色かおつきして、ニヤリともしないでほざくと、女どもはどっと笑って、線香の煙の黒い、吹上げのしぶきの白い、誰彼たそがれのような中へ、びしょびしょと入ってく。
妖術 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)