吊橋つりばし)” の例文
渡り終って一息ついて居ると、炭俵すみだわらを負うた若い女が山から下りて来たが、たたずむ余等に横目をくれて、飛ぶが如く彼吊橋つりばしを渡って往った。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
白い洲の上流は、河になつてゐると見えて、高い堤の上に、珍しい程メカニックな大きい吊橋つりばしがアーチのやうにかゝつてゐた。
浮雲 (新字旧仮名) / 林芙美子(著)
間もなく城壁の一部ががたんとはずれて横たおしになった。それはお城の吊橋つりばしを下ろしたような工合のものであった。
地球発狂事件 (新字新仮名) / 海野十三丘丘十郎(著)
「はい」と御返事をして、そのまま手の土を払って附いて出ました。古びた裏門を出ると、邸の廻りに一間幅いっけんはば位のみぞがあって、そこに吊橋つりばしが懸っています。
鴎外の思い出 (新字新仮名) / 小金井喜美子(著)
時すでに、魏延は部下をひきいて、城門のほうへ殺到し、番兵を蹴ちらして、あわや吊橋つりばしをおろし
三国志:07 赤壁の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
一つはたにに沿った街道で、もう一つは街道の傍から渓に懸った吊橋つりばしを渡って入ってゆく山径だった。街道は展望を持っていたがそんな道の性質として気が散り易かった。
筧の話 (新字新仮名) / 梶井基次郎(著)
それから、自分の寝室へは、だれも近づいて来られないように、ぐるりへ大きなみぞを掘りめぐらし、それへ吊橋つりばしをかけて、それを自分の手で上げたりおろしたりしてその部屋へ出這入ではいりしました。
デイモンとピシアス (新字新仮名) / 鈴木三重吉(著)
吊橋つりばしの見ゆるあたりなる月嚠喨りうりやうも高く出でんとすれど
東京景物詩及其他 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
典韋は、歯をかみまなこをいからして、むらがる敵を蹴ちらし、曹操のために吊橋つりばしの道を斬り開いた。
三国志:03 群星の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
つつみへ登り、長い吊橋つりばしを渡り、見晴亭と、看板の出た、安房旅館といふのに案内された。
浮雲 (新字旧仮名) / 林芙美子(著)
はやも見よ、暮れはてし吊橋つりばしのすそ
邪宗門 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
御所内の裏濠うらぼりへ降りて、そこの吊橋つりばしを駈けわたり、宿場へつづく並木道を反対に、山のほうへ向ってゆく一かたまりがやがて見える。遠くから望むとなおさら心細い小人数に思われた。
源頼朝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
吊橋つりばし灰白はひじろよ、つかれたる煉瓦れんぐわかべ
邪宗門 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
寄手の諸将はためらい合ったが、曹操はもうほり吊橋つりばしを騎馬で馳け渡りながら
三国志:03 群星の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「すわや、たいへんだぞ。諸門を閉めろ。吊橋つりばしをあげてしまえ」
三国志:09 図南の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「玄徳なるぞ、吊橋つりばしを下ろせ」
三国志:04 草莽の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)