吃驚びっく)” の例文
「こんな事でもしなかったら、彼奴あいつ吃驚びっくりしますまい。……だがう私達は伊右衛門のことなど、これからは勘定に入れますまい」
隠亡堀 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
吃驚びっくりしたようじゃありませんか。奥さんはまだそんな人に会った事がないんでしょう。世の中にはいろいろの人がありますからね」
明暗 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
ザヴィエルは、この弥次郎という人間が、実にどうも誠心誠意キリストの教えを守るので、とても吃驚びっくりしたのであります。
これはこれはと吃驚びっくりさせられまして、とてもこれではと思いましたが、何をこれしきのことにと、雪の中をつっきって博物館に行ったことでした。
座右第一品 (新字新仮名) / 上村松園(著)
僕は鍾馗しょうきにつかまった小鬼のように吃驚びっくりした。七郎丸はそのままオイオイと声を挙げて泣くのであった。
吊籠と月光と (新字新仮名) / 牧野信一(著)
あれは遠い丸の内、それでも天気のいい時には吃驚びっくりするほど座敷の障子をゆすぶる事さえある、されば、すぐ崖下に狐を打殺うちころす銃声は、如何に強く耳を貫くであろう。
(新字新仮名) / 永井荷風(著)
その時しゃりこうべは吃驚びっくりして、あいつはいつも電燈の下に座っていた奴だなと思った。——あいつはこんなところへまで出て来ておれに又たせがむんだなと思った。
しゃりこうべ (新字新仮名) / 室生犀星(著)
従妹いとこ一人は無頓着に独りで、あちこち波をき廻して居たが、あんまり早い一行の帰り仕度に吃驚びっくりして波から上って来た。馬車が待たせてあった。長谷からH屋まで電車もある。
鶴は病みき (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
今から数年ももつと前であつたらう、福島コレクションでみた展覧会で見たユトリロは、その作品の制作方法の精神的段階が、あまりに日本的であつたので、私は吃驚びっくりしたことがある。
天丸左陣はこれを聞くと一時は少なからず吃驚びっくりしたが、咄嗟とっさに思案のほぞを決めると、部下の兵を引率して妙高山へ出張って行った。
蔦葛木曽棧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
あたし説明を聞くまでは、きっと気が変になったんだと思って吃驚びっくりしたわ。兄さんは後で仏蘭西フランスの何とかいう人のやった実験だって教えてくれたのよ。
行人 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
あの広い会場を一杯に占領しているのを見ますと私はただ見渡しただけで吃驚びっくりさせられるばかりでした。
帝展の美人画 (新字新仮名) / 上村松園(著)
一喝をくふと吃驚びっくりして、孔のあくほど正義派の会社員を瞶めてゐたが、やがてまるまるとした童顔が次第々々に歪んできて、快心の、然し甚だ人の悪い微笑の皺が
逃げたい心 (新字旧仮名) / 坂口安吾(著)
ほら、よく見ると黒い目金めがねをかけているでしょう、だから初め目が見えないと思っていなかったので、突然、ハモニカを吹き出したのでわたし吃驚びっくりしてしまったんです。
童話 (新字新仮名) / 室生犀星(著)
と、そのとたん、白烏、恰々こうこうと啼くと空高く、道人の肩から舞い上がった。吃驚びっくりしたのは道人である。「ほほう」と云うと振り仰いだ。
任侠二刀流 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
多門がそう言ったとき、女はにわかに吃驚びっくりしたような叫び声をあげて、すぐ逃げ出そうとするのでした。多門は多年やとっている女が何故なぜ自分の顔を怖そうにながめているのかと思って
ゆめの話 (新字新仮名) / 室生犀星(著)
先生は吃驚びっくりなすって目をおそらしになるのであった。
勉強記 (新字新仮名) / 坂口安吾(著)
吃驚びっくりしたのは烏組のお紋、捕りかけた宗三郎をうっちゃって、突っ立ち上がった真正面から、姿は見えないが声がした。
任侠二刀流 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
「おや」と鯱丸は吃驚びっくりした。「向こうを向いている癖に、こっちのことが解ると見える。背後うしろに眼でもあるのかしら。小気味の悪い婆さんだよ」
神秘昆虫館 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
それで恐らく吃驚びっくりして、逃がしてしまうに相違ないよ。逃がせば蝶は帰って来よう。ああそうだよ、この山へな。で、そいつを待つことにしよう。
神秘昆虫館 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
「女の子の寝言に吃驚びっくりなすって、紙帳の隅へケシ飛んで行ったまま、お行儀よく、膝にお手を置いて、かしこまっておいでになるのですものねえ」
血曼陀羅紙帳武士 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
「それは……」と青年は吃驚びっくりするほど態度や声を狼狽うろたえさせたが「どうも此処では申し上げられませんので……」
温室の恋 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
女はハッと驚いたように、急に根方から立ち上がったが、その女の顔を見ると、今度は頼正が吃驚びっくりした。
八ヶ嶽の魔神 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
「何!」と云ったが小一郎は、かなり吃驚びっくりしてしまった。「どうしてお前、そんなことを聞くのだ!」
神秘昆虫館 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
二人の巫女は吃驚びっくりした。ここは緩衝地帯であって、岩石人でも獣人でも、高尚を誇る麗人といえども、入り込むことは出来ないことに約束されてある土地だからであった。
蔦葛木曽棧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
(その桔梗屋へ放火した奴は、これここにいる三十郎なんだよ。——と云うことをズバリと云ったら、三十郎もこの田舎武士たちも、飛び上がって吃驚びっくりすることだろうねえ)
猫の蚤とり武士 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
自分の叫び声に吃驚びっくりして、自分で逃げ出すというわけさ。そこでお前さんに頼みがある。
任侠二刀流 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
「や、これは大きな火事だ」吃驚びっくりしたようにつぶやいた。
八ヶ嶽の魔神 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
私は吃驚びっくりしながらも脱帽して守衛に礼を返した。
支那の思出 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
で、私は吃驚びっくりして、青年の顔を眺めました。
「なんと吃驚びっくり仰天かな?」
八ヶ嶽の魔神 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
と男は吃驚びっくりし
猿ヶ京片耳伝説 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)