古浴衣ふるゆかた)” の例文
田舎いなかの娘であらう。縞柄しまがらも分らない筒袖つつっぽ古浴衣ふるゆかたに、煮染にしめたやうな手拭てぬぐい頬被ほおかぶりして、水の中に立つたのは。
光籃 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
自分や娘の古浴衣ふるゆかたをやったり、仕事にあぶれて晩めしの食えない家族に、かゆにでもと一合二合の米を持っていったり、いわしの安いときには、それさえ買えない人たちに少しずつ分けたり
枡落し (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
土砂つちすなの如くつかひ捨る故に程なく三百兩の金も遣ひなくし今は漸々やう/\丸の内の本多家の大部屋おほべやころげ込めしを貰ひて喰居くひゐたりしが追々おひ/\寒さに向ふ時節なれど着物は古浴衣ふるゆかた一ツゆゑ如何共爲方なく不※ふと大部屋を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
小児心こどもごころにも朝から気になって、蚊帳かやの中でも髣髴ほうふつ蚊燻かいぶしの煙が来るから、続けてその翌晩も聞きに行って、きたない弟子が古浴衣ふるゆかた膝切ひざぎりな奴を、胸のところでだらりとした拳固げんこ矢蔵やぞう、片手をぬい、と出し
国貞えがく (新字新仮名) / 泉鏡花(著)