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ふるゆかた
土砂の如く
遣ひ捨る故に程なく三百兩の金も遣ひなくし今は
漸々丸の内の本多家の
大部屋へ
轉げ込
飯を貰ひて
喰居たりしが
追々寒さに向ふ時節なれど着物は
古浴衣一ツゆゑ如何共爲方なく
不※大部屋を
あゝ
私が
覺えて七つの
年の
冬でござんした、
寒中親子三
人ながら
古裕衣で、
父は
寒いも
知らぬか
柱に
寄つて
細工物の
工夫をこらすに、
母は
欠けた一つ
竃に
破れ
鍋かけて
私に
去る
物を
買ひに
行けといふ