印度更紗インドさらさ)” の例文
床は勿論もちろん椅子いすでもテーブルでもほこりたまっていないことはなく、あの折角の印度更紗インドさらさの窓かけも最早や昔日せきじつおもかげとどめずすすけてしまい
痴人の愛 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
狭い壁を全部、印度更紗インドさらさ模様の壁紙で貼り詰めて、床にはキルクが敷いてある。大理石の机が階下に二つ、二階には只一つある。
東京人の堕落時代 (新字新仮名) / 夢野久作杉山萠円(著)
現に寝室の一方に張った、印度更紗インドさらさの幕を引くと、その中は想像も及ばぬ衣裳の宝庫で、絹と毛皮と、そして高貴なレースの大量が、貧乏人の肝を冷させるのです。
笑う悪魔 (新字新仮名) / 野村胡堂(著)
それに犬の男根のような若芽の護謨ゴム苗や、浅緑の三尺バナナや、青くて柔かな豆の葉や、深い緑のトマトの葉、褐色の鳳梨パイナップルやが、朱紅色の土の上に、まるで印度更紗インドさらさのように
フレップ・トリップ (新字新仮名) / 北原白秋(著)
日本にほん娼婦は浴衣ゆかたに細帯、又は半襦袢じゆばん一枚の下に馬来マレイ人のする印度更紗インドさらさの赤い腰巻サロンをして、同じ卓につて花牌はなふだもてあそんで居る者、編物をして居る者、大阪版の一休諸国物語を読んで居る者
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
俊助は暖炉の上の鏡を背負って、印度更紗インドさらさの帯をしめた初子と大きな体を制服に包んだ野村とが、向い合って立っているのを眺めた時、刹那せつなあいだ彼等の幸福がねたましいような心もちさえした。
路上 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
四方の壁は印度更紗インドさらさ模様を浮かしたチョコレート色の壁紙で貼り詰めてある。天井には雲母刷うんもずり極上の模様紙が一等船室のように輝いている。
暗黒公使 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
私たちは印度更紗インドさらさの安物を見つけて来て、それをナオミが危ッかしい手つきで縫って窓かけに作り、芝口の西洋家具屋から古い籐椅子とういすだのソオファだの、安楽椅子だの
痴人の愛 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)