博奕場ばくちば)” の例文
おれが博奕場ばくちばへ出入りするようになったのは、そのあとのことだった。それまでは花札はなふだにもさいころにも、手を触れたことさえなかった。
おさん (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
送りしが或日番町邊ばんちやうへん屋敷やしき中間部屋ちうげんべや小博奕こばくちありて不※ふと立入しに思ひの外利運りうんを得たりもとよりこのむ道なれば其後は彼方此方と博奕場ばくちば
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
そして天蔵が、博奕場ばくちばにしたり、人獣の血をながしたりしていた神社の拝殿を明け方までにきよめさせて、小六は、そこにぬかず
新書太閤記:01 第一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
例に依ってたくさんの博奕場ばくちばが舞台の左側に出た。はやしの声などは阿Qの耳から十里の外へ去っていた。彼はただ堂元の歌の節だけ聴いていた。彼は勝った。また勝った。
阿Q正伝 (新字新仮名) / 魯迅(著)
侠客肌の次郎左衛門は若いときから博奕場ばくちばへ入り込んで、旦那旦那と立てられているのを、先代の堅気な次郎左衛門はひどく苦に病んで、たびたび厳しい意見を加えたが
籠釣瓶 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
いては手前に能く申し聞けて置く事があるが、悪人と云うものは、善人になると口で云って、其の金を持って往って、博奕場ばくちばへでも引掛ひっかゝり、遣果つかいはたして元の國藏のように悪事をすれば文治は許さぬぞ
業平文治漂流奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
ドバなら知て居る仏英の間の海峡(谷)困るなア冗談じゃ無いぜ賭場とは賭博場ばくちばだアネ(大)成るほど賭場は博奕場ばくちばか夫なら博奕場の喧嘩だネ(谷)爾サ博奕場の喧嘩で殺されたのよ博奕場だから誰も財布の外は何ももって行ぬがサア喧嘩と云えばすぐに自分の前に在る金を
無惨 (新字新仮名) / 黒岩涙香(著)
それやら博奕場ばくちば帰りやらただの旅人などを乗せて、いざ大河のまン中にかかると、張の兄弟は、かねてしめし合せの荒稼ぎにかかるのだった。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
それから十余年、仕事には手も触れず、おばさんから金をせびって博奕場ばくちばへ入りびたりで、金や物のないときには、まるで鬼か悪魔のように暴れた。
枡落し (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
殺して金百兩をうばり其上にて關宿せきやどの藤五郎の博奕場ばくちばで四人と言者を切て又さかひの町でも鷹助たかすけに手疵をおはせしこと寶珠屋はうじゆや大坂屋のことからしてオヽそれ/\其前のことだ栗橋の土手どて眞田商人さなだあきんど
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
「無類に気のいい正直な奴ですが、なにしてもかねを見たらすぐ博奕場ばくちばです。いずれ返すには返しましょうがね」
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
晴さんとて其夜は其儘我が家に歸りしが其後明暮あけくれ心懸てぞ居たりける然るに同宿に三五郎と云者あり此三五郎は侠氣をとこぎある者にて生得しやうとく博奕ばくちを好み平生賭事かけごとのみを業としけるが或時博奕場ばくちばよりもどり食事を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
「これ、あわてんでもよい。博奕場ばくちばなどをおさえに来たのではない。駕を一挺、大急ぎで仕立てい」
松のや露八 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
すさまじい博奕場ばくちばの光景が、彼の眼に映っていた。旗本くずれ、雑多な武家ごろ、医者風、旦那てい、坊主、女など——円座えんざを作って、なぐさみごとに、血眼を闘わせている。
大岡越前 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
天蔵の一味は、よいことにして、博奕場ばくちばを開いたり、神社の境内で、牛や鶏を屠殺とさつして喰ったりしていたらしい。また、やしきには、女をあつめ、神社の拝殿は、武器の隠匿場いんとくばにしていたという。
新書太閤記:01 第一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)