匹敵ひってき)” の例文
黄白青銭こうはくせいせんが智識の匹敵ひってきでない事はこれで十分理解出来るだろう。さてこの原理を服膺ふくようした上で時事問題にのぞんで見るがいい。
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
ここにおいてか芭蕉は無比無類の俳人として認められ、また一人のこれに匹敵ひってきする者あるを見ざるの有様なりき。芭蕉は実に敵手なきか。いわく、否。
俳人蕪村 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
その同じ十数年の間にわが国ではこれに匹敵ひってきすべき発明が一つでもあったかというに、おそらく何もなかったように思う。
民族の発展と理科 (新字新仮名) / 丘浅次郎(著)
これに匹敵ひってきする残虐な犯例は、世界犯罪史をつうじてちょっと類を求めがたいのだが、なかんずくここに留意りゅういすべきことは、前々からいうとおり
女肉を料理する男 (新字新仮名) / 牧逸馬(著)
そうさ、我々の仲間では、あれがいちばんえらかった、岩倉とどちらであろうか、ともかくも岩倉と匹敵ひってきする男であった
しかも、一人の人造人間は生きた人間の兵士の百人に匹敵ひってきし、五十万の英兵えいへいを迎えつに充分であるというのだ。
人造人間の秘密 (新字新仮名) / 海野十三(著)
空軍の為めには全世界に匹敵ひってきする程の費用を費して居ますよ。海軍だって仲々強いものですよ
母と娘 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
ついでに全部認めちまうさ。——そう云えばこの頃初子女史は、『戦争と平和』に匹敵ひってきするような長篇小説を書いているそうじゃないか。どうだ、もうおっつけ完成しそうかね。」
路上 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
不幸にして独逸にはブルドッグに匹敵ひってきする犬がいないから、土佐犬を担ぎ出したのである。
親鳥子鳥 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
文醜ぶんしゅうを生捕れ、文醜も河北の名将、それを生捕らば、顔良を討った功に匹敵ひってきしようぞ!」
三国志:05 臣道の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
彼の言語態度もまたそれに匹敵ひってきして陽気であった。自分の持って来た不愉快な話を、突然と切り出すには余りに快活すぎた。
行人 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
国家の大なる損失です。伯父に匹敵ひってきする研究家が、わが国に一人でも居ると思うのですか
人造人間事件 (新字新仮名) / 海野十三(著)
クロこそは、人間のもつなにものも、匹敵ひってきするあたわざる飛行の武器ぶきだ、生ける武器だ。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
尾張おわり月樵げっしょうは、文鳳に匹敵ひってきすべき画家である。
病牀六尺 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
第三の場合はもとよりまれなり。第二もまた多からず。凶漢は敗徳において匹敵ひってきするをもって常態とすればなり。
虞美人草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
専務車掌の倉内は、警部の愚問に匹敵ひってきするような愚答ぐとう臆面おくめんもなくスラリと述べた。
省線電車の射撃手 (新字新仮名) / 海野十三(著)
こういう場合、人々はすぐ、その判定を、双方の所領とか、兵数とか、その与国とか、おもてに現われた数字に求めたが——毛利の強大も織田の領有も、その国力では、ほとんど匹敵ひってきして見えた。
新書太閤記:05 第五分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
これに匹敵ひってきするほどの科学小説家なく、また春浪氏の作品は、冒険小説なる名称をもって呼びならわされたのであって、その頃を科学小説時代と云うにはすこし適当ではないように思う。
『地球盗難』の作者の言葉 (新字新仮名) / 海野十三(著)
更に生徒の学年成績に匹敵ひってきすべきものである。
イズムの功過 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)