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匀
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にお
ふりがな文庫
“
匀
(
にお
)” の例文
毒がいは毒飼で、毒害は
却
(
かえ
)
ってアテ字である、其毒飼という言葉が時代の
匀
(
にお
)
いを表現している通り、此時代には毒飼は頻々として行われた。
蒲生氏郷
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
さっき「何をあやまるのだい」と云って笑った時から、ほんのりと赤く
匀
(
にお
)
った頬のあたりをまだ
微笑
(
ほほえみ
)
の影が去らずにいる。
雁
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
それからその日の光に蒸されたせいか、壺にさした
薔薇
(
ばら
)
の花も、前よりは一層重苦しく、甘い
匀
(
にお
)
いを放っていた。
路上
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
ある花咲き
匀
(
にお
)
うもののある所へ、逃げ込んで行こうとするのが、目の前に見えて来る。
みれん
(新字新仮名)
/
アルツール・シュニッツレル
(著)
四つの時絶間なく咲き
匀
(
にお
)
へり。
ファウスト
(新字新仮名)
/
ヨハン・ヴォルフガング・フォン・ゲーテ
(著)
▼ もっと見る
橄欖
(
かんらん
)
の花の
匀
(
にお
)
いの中に大理石を畳んだ宮殿では、今やミスタア・ダグラス・フェアバンクスと
森律子嬢
(
もりりつこじょう
)
との舞踏が、いよいよ佳境に入ろうとしているらしい。……
葱
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
午後二時というに上野を
出
(
い
)
でて高崎におもむく汽車に
便
(
たよ
)
りて熊谷まで行かんとするなれば、夏の日の真盛りの頃を歩むこととて、
市中
(
まちなか
)
の塵埃の
匀
(
にお
)
い、
馬
(
うま
)
車
(
くるま
)
の騒ぎあえるなど
知々夫紀行
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
僕は石原の目を
掠
(
かす
)
めるように、女の顔と岡田の顔とを
見較
(
みくら
)
べた。いつも
薄紅
(
うすくれない
)
に
匀
(
にお
)
っている岡田の顔は、確に
一入
(
ひとしお
)
赤く染まった。そして彼は偶然帽を動かすらしく
粧
(
よそお
)
って、帽の
庇
(
ひさし
)
に手を掛けた。
雁
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
結
(
ゆ
)
いたての髪を
匀
(
にお
)
わせた美津は、
極
(
きま
)
り悪そうにこう云ったまま、ばたばた茶の間の方へ駈けて行った。
お律と子等と
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
フランツが二度目に出掛けた頃には、巓という巓が、
藍色
(
あいいろ
)
に晴れ渡った空にはっきりと画かれていた。そして
断崖
(
だんがい
)
になって、山の骨のむき出されているあたりは、紫を帯びた
紅
(
くれない
)
に
匀
(
にお
)
うのである。
木精
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
まるで磨ぎすました
焼刃
(
やきば
)
の
匀
(
にお
)
いを嗅ぐような、身にしみてひやりとする、と同時にまた何となく頼もしい、妙な心もちが致した事は、先刻もう御耳に入れて置きました。
邪宗門
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
私は折々書見の眼をあげて、この古ぼけた仏画をふり返ると、必ず
炷
(
た
)
きもしない線香がどこかで
匀
(
にお
)
っているような心もちがした。それほど座敷の中には寺らしい閑寂の気が
罩
(
こも
)
っていた。
疑惑
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
しかもあの
平太夫
(
へいだゆう
)
が、なぜか堀川の御屋形のものを
仇
(
かたき
)
のように憎みまして、その時も梨の花に、うらうらと
春日
(
はるび
)
が
匀
(
にお
)
っている
築地
(
ついじ
)
の上から
白髪頭
(
しらがあたま
)
を
露
(
あらわ
)
して、
檜皮
(
ひわだ
)
の
狩衣
(
かりぎぬ
)
の袖をまくりながら
邪宗門
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
少しも取乱した
御容子
(
ごようす
)
を御見せにならず、ただ、青ざめた御顔を曇らせながら、じっと大殿様の御枕元へ坐っていらしった事を考えると、なぜかまるで
磨
(
と
)
ぎすました
焼刃
(
やきば
)
の
匀
(
にお
)
いでも
嗅
(
か
)
ぐような
邪宗門
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
匀
部首:⼓
4画
“匀”を含む語句
匀々
匀合