効験ききめ)” の例文
旧字:效驗
われ生来多病なりしかどその頃は腹痛む事稀なりしかば八重がしきりにかの草の効験ききめあること語出かたりいでても更に心にむる事もなくて打過うちすぎぬ。
矢はずぐさ (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
唯一の頼みにしていた白屈菜くさのおうを、ある薬剤の大家に製薬させてんでいたが、大してそれの効験ききめのないことも判って来た。
(新字新仮名) / 徳田秋声(著)
仏の御心みこころにもその祈願は取り上げずにいられまいと思われた風流男たちの恋には効験ききめがなくて、荒削りな大将に石山観音の霊験が現われた結果になった。
源氏物語:31 真木柱 (新字新仮名) / 紫式部(著)
どういう効験ききめがあるか詳しいことは解りませんが、僂麻質斯リウマチスには余程いいようです。で、川の中には幾所にも温泉がき出て川水と共に湯気を放って流れて居る。
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
にがくはなけれど効験ききめある薬の行きとどいた意見に、汗を出して身の不始末をずる正直者の清吉。
五重塔 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
また実際著しき効験ききめあるは予もこれを知り、三好博士の学論をも拝読したが、永世これを珍重し来った支那でさえ、これを強壮剤として濫用するの弊を論じた者多ければ
もとよりその効験ききめとみに見ゆべくもあらず、お糸は日毎に衰へゆくを、さすがにあはれとは見ながらその老医さへ我が留守に来りたりと聞きては、庄太郎安からぬ事に思ひ
心の鬼 (新字旧仮名) / 清水紫琴(著)
芭蕉の葉煎じたを立続けて飲ましって、効験ききめの無い事はあるまいが、はやうなろうと思いなさるよくで、あせらっしゃるに因ってなおようない、気長に養生さっしゃるが何より薬じゃ。
婦系図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
あるものはおいを忘れ、またあるものは立身の遅いのを忘れようとしてゐる場合だつたので、そんな物忘れをするのに効験ききめのある草が見つかつたなら、人知れず自分の宿に移し植ゑたいといふのが
「こんなくらいなら、湯治に行ったって効験ききめがありゃしない。」と言って、叔父は笑っていたが、するうちに叔母は二十日はつかもいないで帰って来た。
足迹 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
源氏は瘧病わらわやみにかかっていた。いろいろとまじないもし、僧の加持かじも受けていたが効験ききめがなくて、この病の特徴で発作的にたびたび起こってくるのをある人が
源氏物語:05 若紫 (新字新仮名) / 紫式部(著)
死んだ尼君が絶え間ない祈願に愛孫のことを言って仏にすがったその効験ききめであろうと思うのであったが、権力の強い左大臣家に第一の夫人があることであるし
源氏物語:07 紅葉賀 (新字新仮名) / 紫式部(著)
月が十月へ入ってから、撒いておいた広告の著しい効験ききめで、冬の制服や頭巾ずきんつきの外套がいとうの註文などが、どしどし入って来た。その頃から工場には職人の数も殖えて来た。
あらくれ (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
もし効験ききめが見えませんでした時には一人の僧の不名誉になることですから、隠れて来ておりました。
源氏物語:05 若紫 (新字新仮名) / 紫式部(著)
私の乳母めのとの、この五月ごろから大病をしていました者が、尼になったりなどしたものですから、その効験ききめでか一時くなっていましたが、またこのごろ悪くなりまして
源氏物語:04 夕顔 (新字新仮名) / 紫式部(著)
「さあいっしょに行きましょう。だれにわかることがあるものですか。同じ仏様でもあのお寺などにこもってお願いすることは効験ききめがあってよい結果を見た例がたくさんあるのですよ」
源氏物語:55 手習 (新字新仮名) / 紫式部(著)