助言じょごん)” の例文
いよいよ催促を受けたと電報を見ながら苦笑しているので、いいや、急ぎ帰りつつありとかけておくさと、ひとの事だからはなはだ洒落しゃらく助言じょごんをした。
満韓ところどころ (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
しかしきさまの云うように思案しかえるはどうしても厭、十兵衛が仕事に手下は使おうが助言じょごんは頼むまい、人の仕事の手下になって使われはしょうが助言はすまい
五重塔 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
入口では出入ではいりの邪魔になると思ったけれど、折角の助言じょごんを聴かぬのも何だから、言う通りに据直すえなおすと、雪江さんが、矢張やっぱり窓の下の方がいという。で、矢張やっぱり窓の下の方へ据えた。
平凡 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
もう一遍田口に会う手段を講じて見る事の可否は、昨日きのうすでに婆さんの助言じょごんで断定されたものと敬太郎は解釈した。
彼岸過迄 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
そりゃ当人の望み通りにした方が好うがすななどと云う縁談に関する助言じょごんを耳にさしはさむくらいなもので、面と向き合っては互に何も語らずに久しく過ぎた。
思い出す事など (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
だから私のひとに与える助言じょごんはどうしてもこの生の許す範囲内においてしなければすまないように思う。
硝子戸の中 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
老師ろうしから公案こうあんの出る事や、その公案に一生懸命かじりついて、朝も晩も昼も夜も噛りつづけに噛らなくてはいけない事やら、すべて今の宗助には心元なく見える助言じょごんを与えた末
(新字新仮名) / 夏目漱石(著)
鈴木のとうさんは金と衆とに従えと主人に教えたのである。甘木先生は催眠術で神経を沈めろと助言じょごんしたのである。最後の珍客は消極的の修養で安心を得ろと説法したのである。
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
それから北京ペキンへ出て、上海シャンハイへ来て、上海から満鉄の船で大連まで帰って、それからまた奉天へ行って、今度は安奉線あんぽうせんを通って、朝鮮へ抜けたら好いだろうとすこぶる大袈裟おおげさ助言じょごんを与える。
満韓ところどころ (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
君の目下の境遇が、今僕の云ったような助言じょごん——だか忠告だか、または単なる知識の供給だか、それは何でも構わないが、とにかくそんなものに君の注意を向ける必要を感じさせないのだ。
明暗 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
ゆっくり会ったらかろうという注意とも慰藉いしゃともつかない助言じょごんも与えた。
彼岸過迄 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
和尚おしょう助言じょごんは十七八年ぶりで始めて役に立ちそうな気色けしきに髯は延びて来た。さいはいっそ御生おはやしなすったら好いでしょうと云った。余も半分その気になって、しきりにその辺をで廻していた。
思い出す事など (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
津田は夫人のもたらした温泉行の助言じょごんだけをごく淡泊あっさり話した。
明暗 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)