こは)” の例文
「さやうでございますよ、年紀としごろ四十ばかりの蒙茸むしやくしや髭髯ひげえた、身材せいの高い、こはい顔の、まるで壮士みたやうな風体ふうていをしておいででした」
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
私はこの通りのひどい髯武者ひげむしやで、毎日のやうに當つて置かないと、大變な顏になります。その上恐ろしくこはい毛で、並大抵の剃刀ぢや痛くてかなひません。
「鷹の子供は、もう余程、毛もこはくなりました。それに仲々強いから、きっと焼けないでげたでせう」
楢ノ木大学士の野宿 (新字旧仮名) / 宮沢賢治(著)
痩せた骸骨むくろを並べてゐる畝や、拔き殘された大根のこはばつた葉の上に、東雲しののめの光が白々と宿つて居た。
葬列 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
こはくなつた指がナイフを握つてゐるのが、役所でペン軸を持つてゐるのと同じやうに見える。
祭日 (新字旧仮名) / ライネル・マリア・リルケ(著)
「餘程情のこはい娘と見えますな」と、太田が佐佐を顧みて云つた。
最後の一句 (旧字旧仮名) / 森鴎外(著)
象の顎に白く見ゆる毛こはげにて口にはよだれたゝへたるらし
河馬 (旧字旧仮名) / 中島敦(著)
「品吉の剃刀ですよ。あの人はひげこはいから、外の剃刀ではいけないんだと言つてゐましたが」
井戸ある屋後をくごへ廻ると、此処は半反歩許りの野菜畑で、霜枯れて地に伏した里芋の広葉や、紫の色せて茎許りの茄子の、痩せた骸骨むくろを並べてゐる畝や、抜き残された大根のこはばんた葉の上に
葬列 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)