利休りきゅう)” の例文
器械的に利休りきゅう以後の規則を鵜呑うのみにして、これでおおかた風流なんだろう、とかえって真の風流人を馬鹿にするための芸である。
草枕 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
いわゆる大茶人と称せられる人々で珠光じゅこうとか紹鴎じょうおうとか利休りきゅうとかまたは相阿弥そうあみのような人々である。下っては光悦こうえつらもそれらの間に列する。
工芸の道 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)
我ら会員は相次いでナポレオン、孔子こうし、ドストエフスキイ、ダアウィン、クレオパトラ、釈迦しゃか、デモステネス、ダンテ、せん利休りきゅう等の心霊の消息を質問したり。
河童 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
と、茶会を思い立って、利休りきゅうの娘で、鵙屋もずやの妻となっていたおぎんを召しよせて、趣好を相談した。
日本名婦伝:太閤夫人 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
麓は利休りきゅう手簡しゅかんの軸を持ち来りて釜の上に掛く。その手紙の文に牧渓もっけいをほめて
墨汁一滴 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
よく見せねばならないという嫌味がない。よしや、些少はあっても、作意が俗を超えているから実に立派だ。利休りきゅう少庵しょうあん宗旦そうたんにしろ、遠州えんしゅう宗和そうわにしろ、書の神髄に徹しているところがある。
始めて独立した茶室を建てたのは千宗易せんのそうえき、すなわち後に利休りきゅうという名で普通に知られている大宗匠で、彼は十六世紀太閤秀吉たいこうひでよしの愛顧をこうむり、茶の湯の儀式を定めてこれを完成の域に達せしめた。
茶の本:04 茶の本 (新字新仮名) / 岡倉天心岡倉覚三(著)
自然に話は利休りきゅうの事に移って行った。
(新字新仮名) / 太宰治(著)
今時利休りきゅうでもいたら、早速中から名器をえらび出すだろう。土瓶は近来どこの窯でも堕落し切ってしまったが喜阿弥の飴薬あめぐすり土瓶は昔のままである。
雲石紀行 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)
といったさかい宗易そうえき——利休りきゅうも来て、茶をてた。
新書太閤記:05 第五分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
私は紹鴎じょうおうとか利休りきゅうとかを指して云うのです。ややおくれては光悦の如き例外を多少は挙げ得るでしょう。中期以後、特に遠州えんしゅうあたりから茶道は下落する一方です。
民芸とは何か (新字新仮名) / 柳宗悦(著)
ここで出来るもので水甕や蓋附壺によい品がありますが、甕で「利休りきゅう」と呼んでいる黄色い釉薬うわぐすりのがあります。この色は特別に美しくやや艶消つやけしの渋い調子であります。
手仕事の日本 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)