初七日しょなぬか)” の例文
母の初七日しょなぬかの時もね、わたしはたて続けにビールを何杯飲みましたろう。なんでもびんがそこいらにごろごろころがりました。
或る女:1(前編) (新字新仮名) / 有島武郎(著)
求馬は甚太夫喜三郎の二人と共に、父平太郎の初七日しょなぬかをすますと、もう暖国の桜は散り過ぎた熊本くまもとの城下を後にした。
或敵打の話 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
それから初七日しょなぬかの日に、親類一同がかたの如く寺参りに行くと、祖父おじいさんの墓は散々に掘り返されて、まだ生々しい死骸が椿の樹の高い枝に懸けてあった。
飛騨の怪談 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
あんまり引っこんでばかりいては、気もくさくさするだろうから、初七日しょなぬかでもすんだらまた茶店へも出るようにしたがいい。なに、それも永いことではない。
四十八人目 (新字新仮名) / 森田草平(著)
野辺の送りを致すやら実に転覆ひっくりかえるような騒ぎ、それで段々延々のび/\になっての娘の事をきくもないほどの実に一通りならん愁傷で、まず初七日しょなぬかの寺詣りも済みましたが
政談月の鏡 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
母の石塔せきとうの左側に父の墓はまだ新しい。母の初七日しょなぬかのおり境内へ記念に植えた松の木杉の木が、はや三尺あまりにのびた、父の三年忌には人のたけ以上になるのであろう。
紅黄録 (新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
初七日しょなぬかの晩でございました。奥さんが線香を上げに、仏壇をのぞかれますと、大きな蛇のとぐろを巻いていましたのが、鎌首かまくびを上げて、じっと奥さんのお顔を見たそうでございます。
(新字新仮名) / 森鴎外(著)
叔父は明後日あさって初七日しょなぬかのことで、宵から丸山へ相談に行っていた。
足迹 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
初七日しょなぬかもうでし折には、なかばれたる白張しらはり提灯ちょうちんさびしく立ちて、生花いけばなの桜の色なくしぼめるを見たりしが、それもこれも今日はのこりなく取捨られつ、ただ白木の位牌と香炉のみありのままに据えてあり。
父の墓 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
三月二十四日には初七日しょなぬかの営みがあった。
阿部一族 (新字新仮名) / 森鴎外(著)