出稼でかせ)” の例文
春になり仕事が無くなると、カムサツカへ出稼でかせぎに出た。どっちの仕事も「季節労働」なので、(北海道の仕事はほとんどそれだった)
蟹工船 (新字新仮名) / 小林多喜二(著)
松本から三河みかわ尾張おわりの街道、および甲州街道は彼ら中馬が往還するところに当たり、木曾街道にも出稼でかせぎするものが少なくない。
夜明け前:02 第一部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
蓄殖たくはえたる趣きを聞て羨敷うらやましく存じ私し夫婦も江戸へ出稼でかせたくは存じたれども外聞ぐわいぶんも惡く彼是延引えんいん致し居中金谷村に法會ほふゑありて九郎兵衞諸共もろとも里を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
「あれ出稼でかせぎにゆく人たちよ」とりつ子がいった、「お百姓だけではくらせないから、大阪とか名古屋あたりへ、冬のあいだだけ稼ぎにゆくんですって」
おごそかな渇き (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
すると横浜よこはま懇意こんいな人が親切に横浜よこはま出稼でかせぎにるがい、うやつてゐては何時いつまでも貧乏してゐる事ではらん、はまはまた贔屓強ひいきづよところだからとつてくれましたので
心眼 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
三年前から妻子をつれて佐世保へ出稼でかせぎに来てゐたのである。私は此の人に出逢つたおかげで、あと三里の道を歩かずにすんだ。その上私は当分此の人の家に厄介やくかいになることにさへなつた。
ある職工の手記 (新字旧仮名) / 宮地嘉六(著)
もなくあつちの方が金が儲かると云つて、又大連へ出稼でかせぎに行つた。
三四郎 (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
この出稼でかせぎは、美濃から来た四人のものにとって、かなりの冒険とも思われた。中津川から神奈川まで、百里に近い道を馬の背で生糸の材料を運ぶということすら容易でない。
夜明け前:01 第一部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
そのとき「兵曹長」は出稼でかせぎにいっていた。本当の名はささやん、左三郎とでも書くのだろうか、出稼ぎがどこへなにしにいったものか、いまではもう思いだすことができない。
青べか物語 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
こんな馬鹿気ばかげたものはない。い時分に出稼でかせぎなどゝ云ふものはなかつた。みんな戦争の御かげだ。何しろ信心しんじんが大切だ。生きて働らいてゐるにちがひない。もう少し待つてゐれば屹度きっと帰つて来る。
三四郎 (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
そのとき「兵曹長」は出稼でかせぎにいっていた。本当の名はささやん、左三郎とでも書くのだろうか、出稼ぎがどこへなにしにいったものか、いまではもう思いだすことができない。
青べか物語 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
旧師の横浜出稼でかせぎについては、これまでとても弟子たちの間に問題とされて来たことだ。
夜明け前:01 第一部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
中津川の医者で、半蔵のふるい師匠にあたる宮川寛斎みやがわかんさいも、この一行に加わって来た。もっとも、寛斎はただの横浜見物ではなく、やはり出稼でかせぎの一人ひとりとして——万屋安兵衛の書役かきやくという形で。
夜明け前:01 第一部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)