冥利みやうり)” の例文
冥利みやうりといふものがございます。それに私の作つた草鞋は丈夫ださうで、山の手からわざ/\此處まで買ひに來るお客樣もございます」
成程なるほど善悪にや二つは無えが、どうせ盗みをするからにや、悪党冥利みやうりにこのくれえな陰徳は積んで置きえとね、まあ、わつちなんぞは思つてゐやすのさ。
鼠小僧次郎吉 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
「そんぢやお内儀かみさんそれけえしてまたほかにもなんとかしたら冥利みやうりりいやうなこともりあんすめえな」かれなさけなげな内儀かみさんをちらりとていつた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
何たるこつちや、今時、冥利みやうりがつきる
茶道に遊ぶものの冥利みやうり、一度は手に入れたいと思つた井戸の茶碗が、こんな機縁で、たつた五十兩で手に入るといふのは、全く夢のやうです。
「かう、番頭さん、鼠小僧の御宿をしたのは、御前おめえの家の旦那が運が好いのだ。さう云ふおれの口を干しちや、旅籠屋はたごや冥利みやうりが尽きるだらうぜ。ますで好いから五合ばかり、酒をつけてくんねえな。」
鼠小僧次郎吉 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
「でも、お孃樣、十手冥利みやうり、どうしてこんなことになつたか、それは一應調べなきやなりません。曲者を取つて押へるか押へないかは別として」
「噂に聽いただけで、親分はまだ見たことは無いでせう、十手冥利みやうりに、たまにはおまゐりして置くものですよ」
私は藥種渡世の冥利みやうりに、この二本の徳利で、大井久我之助樣と果し合ひがいたしたいのでございます。
よし/\、それ以上負けさしちや、多賀屋も冥利みやうりが惡からう。お前は思つたより良い男だ、手のんだ人殺しなんかするより、心を入れ替へて商賣でもはげむがよからう。
さそひ出すぢやありませんか。——どんな證據があるか知らないけれど、あんな氣の良いお染ちやんが、人なんか殺すもんですか。默つて見てゐちや御用聞冥利みやうりが盡きますよ
「千兩箱が夢枕に立つたのさ。このまゝ埋まつちや冥利みやうりが惡いから、掘り出して下さいつてね」
「よく仰しやつて下さいました。御用聞冥利みやうり、この平次が手一杯にお引受け申しませう。就ては旦那、私が聞き度いと思ふことを、皆んな隱さずに仰しやつて頂けませうか」
こいつは近頃の面白い話ぢやありませんか、御用聞冥利みやうり、ちよいと覗いて見ませんか、親分
「今朝は妙に人出が多いので、土手の下で朝寢をして居ては、商賣冥利みやうりが盡きます、へエ」
こんな變つた事件しごとも珍らしいから、俺も御用聞冥利みやうりと、徳力屋の主人が氣の毒さに引受けたが、今度といふ今度は、今までのやうには裁き切れない、——思ひ切つて變つたことを
折つた積りさ。さぬ仲の遠慮はあるにしても、あんまり勝手で見て居られないから、——どんな事があつても、新さんを捨てちや冥利みやうりが惡い、もう一度考へ直すやうに——つてネ
一人でつかつちや冥利みやうりが惡いから、取あへず親分に見て貰ふつもりで持つて來ましたよ。
「それほど思ひ込まれたら、八五郎も男冥利みやうりだ、二た晩三晩行つて泊つて見るか」
「相濟みません。でも、好い女でしたよ。ちよい/\見かける年増ですが、あんな好い女を見ると、ちよいと手輕なものをすり度くなります。商賣冥利みやうりでね、いゝ形見になりますから——」
「御用聞冥利みやうりだ。あんな可愛い娘に拜まれたら、惡い心持ぢやあるめえ」
「兄殺しは重罪だが、自分の家へ入つても泥棒は泥棒に違ひない、それを暗闇の中で成敗したのは神業かみわざだ。此處でお前を縛つちや、少しばかり十手冥利みやうりが惡からう。なア、八、どうしたものだ」
商賣冥利みやうり、お客への世辭のつもりだつたかもわかりません。
御用聞冥利みやうりに、お前を助けてやる