兵粮ひょうろう)” の例文
兵士はもとより、武器、弾薬、兵粮ひょうろう、その他すべて軍事にかかわる品々をあるいは売りあるいは貸し渡すこともまた厳禁たるべきもの。
夜明け前:03 第二部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
「さすがの阿賀妻どのも、おん身らの努力のほどは計算出来ざったと見えてのう、惜しいことに、今日はまたしても兵粮ひょうろうの買いだしに出向いておる」
石狩川 (新字新仮名) / 本庄陸男(著)
この近くに天蕩山てんとうざんと申す山があります。そこは曹操が兵粮ひょうろうを貯えて、遠大な計をめぐらした所です。もしこの山を攻め取ったならば、魏軍は粮食りょうしょく補給の路を
三国志:09 図南の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
そして人質の婦女の一隊は、その日も兵粮ひょうろう弾薬の運搬や、負傷者の介抱にかい/″\しく奔走していた。
氏郷は兵粮ひょうろうを徴発し、武具を補足して名生に拠るの道を講じた。急使は会津へせ、会津からは弾薬を送って来た。政宗は氏郷が動かぬのを見て何とも仕難かった。
蒲生氏郷 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
兵粮ひょうろうの心配はしなさんな。あたしが居りゃあ、大丈夫。しっかり、交渉の方を進めて下さい」
花と龍 (新字新仮名) / 火野葦平(著)
そのすこし前の戦争の時にはこの高処たかみへも陣が張られたと見えて、今この二人がその辺へ来かかッて見回すとちぎれた幕や兵粮ひょうろうの包みが死骸とともに遠近あちこちに飛び散ッている。
武蔵野 (新字新仮名) / 山田美妙(著)
されども海陸軍、必ずしも軍人のみをもって支配すべからず。軍律の裁判には、法学士なかるべからず。患者のためには、医学士なかるべからず。行軍の時に、輜重しちょう兵粮ひょうろうの事あり。
学問の独立 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
手をつかねていても、わたしたちは亡ぼされてしまう、生きるか死ぬかの、時が来たのです、甲府城には、武器も、兵粮ひょうろうも、馬も、兵も集めてある、恵林寺さまの御遺志を守って、城にたてこもって
山彦乙女 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
兵粮ひょうろうだ、奥へへえって黒百合を取って来ようというんだから、日が暮れようも分らねえ。ひもじくなるとそいつをかじらあ、どうだ、お前、勇美さんに言いねえ、土産を持って行ってやるからッてよ。」
黒百合 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「その間の兵粮ひょうろうは……」
大菩薩峠:05 龍神の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
之を兵粮ひょうろうにとて
鬼桃太郎 (新字新仮名) / 尾崎紅葉(著)
時に、陽平関の魏軍へ、またしても、味方の兵粮ひょうろう貯蔵地の危急がきこえた。曹操は、許褚きょちょを呼んで
三国志:09 図南の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
サ、かく大事を明かした上は、臙脂屋、其座はただ立たせぬぞ、必ず其方、武具、兵粮ひょうろう、人夫、馬、車、此方の申すままに差出さするぞ。日本国は堺の商人あきゅうど、商人の取引、二言は無いと申したナ。
雪たたき (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
武具、兵粮ひょうろう、医薬のたぐいはたえずあとから補給しなければならぬ。
城を守る者 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
幸いにも、黄蓋は武具兵粮ひょうろうつかさどる役目にあれば、丞相だに、だく! とご一言あれば、不日、呉陣を脱して、呉の兵糧武具など、及ぶかぎり舷に積載してお味方へ投じるでござろう
三国志:07 赤壁の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
呉と荊州とは、唇歯しんしの関係にあるし、姻戚いんせきの義理もある。——依って駈けつけねばならないが、魏の曹軍に対しては、いかんせん兵力も兵粮ひょうろうも足らない。精兵三、四万に兵粮十万石を合力されたい。
三国志:09 図南の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)