僅少わづか)” の例文
毎日、毎日——騒しい教場の整理、大勢の生徒の監督、僅少わづかの月給で、長い時間を働いて、くまあ今日迄自分でも身体が続いたと思ふ位だ。
破戒 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
親子おやこもしくは夫婦ふうふ僅少わづか手内職てないしよくむせぶもつらき細々ほそ/\けむりを立てゝ世が世であらばのたんはつそろ旧時きうじの作者が一場いつぢやうのヤマとする所にそろひしも今時こんじは小説演劇を
もゝはがき (新字旧仮名) / 斎藤緑雨(著)
毎月まいげつ僅少わづかな下宿代は新聞に投書する斷片的の評論によつても得られるので、創作の感興來らざれば、詩集を懷にして公園の靜な樹下にさまよひ、さて感興來ればも眠らずに筆を執つて
歓楽 (旧字旧仮名) / 永井荷風永井壮吉(著)
たかどのを下りてここに来たるは僅少わづかひまなれば、よもかの人はいまだ帰らざるべし、若しここに出できたらば如何いかにすべきなど、さすがに可恐おそろしきやうにも覚えて、あゆみは運べど地を踏める心地も無く
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
風当かぜあたりの強きゆゑか、何れも丸裸体まるはだかになつて、黄色に染つた葉の僅少わづかばかりが枝にしがみ着いて居るばかり、それすら見て居る内にバラ/\と散つて居る。風の加はると共に雨が降つて来た。
空知川の岸辺 (新字旧仮名) / 国木田独歩(著)
もと/\父が家族を引連れて、この片田舎に移つたのは、牧場へ通ふ便利を考へたばかりで無く、僅少わづかばかりの土地を極く安く借受けるやうな都合もあつたからで。
破戒 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
僅少わづかよろしいので、手数料として」
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
あるひは君等の目から見たら、今こゝで我輩が退職するのは智慧ちゑの無い話だと思ふだらう。そりやあ我輩だつて、もう六ヶ月踏堪ふみこたへさへすれば、仮令たとへ僅少わづかでも恩給のさがる位は承知して居るさ。
破戒 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)