ちよい)” の例文
『然うですか。ぢや手紙が着いたんですね?』と親げな口を利いたが、ちよいと俯向加減にして立つてゐる智恵子の方を偸視ぬすんで
鳥影 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
「是非お目に懸りたいと言つて、何と言つても帰りませんから、座敷へ上げて置きました、ちよいとお会ひなすつて、早くかへしておしまひなさいましな」
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
近子はちよいと嫌な顏をして、「それでも貴方あなたうかするとれツて有仰おつしやることがあるぢやありませんか。」
青い顔 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
K—先生に絶交状を附けられたのはう度々の事で、ひとに話しても、「又ですか。」と笑はれる。感情の強い人ゆゑ、ちよいとした事で騒ぎたてるが、直る事もすぐ直る。
茗荷畠 (新字旧仮名) / 真山青果(著)
ちよいと見たつてそんな事を為さうな風ぢやありませんか。お前さんなんぞは堅人かたじんだから可いけれど、本当にあんな者に係合かかりあひでもしたら大変ですよ」
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
洋服着た男とでも肩が擦れ/\になると、訳もなく身体が縮んで了つて、ちよいと首を動かすにも頸筋が痛い思ひ。停るかと思へば動き出す。動き出したかと思へば停る。
天鵞絨 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
田住の方がかへつて恐縮して、ヘツとくびをちゞめて友達の足の裏をちよいと突いた。
茗荷畠 (新字旧仮名) / 真山青果(著)
「さうして明日みようんち、五時頃ちよいとお目に掛りたいから、さう申上げて置いてくれと有仰おつしやつてで御座いました」
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
眼をギラギラ光らして舌を出し乍ら、垢づいた首巻を巻いて居たが、階段はしごを降りる時はまた顔を顰蹙しかめて、ちよいと時計を見上げたなり、事務の人々には言葉もかけず戸外そとへ出て了つた。
病院の窓 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
気障きざ厭味いやみもない、言語ことばから挙動ものごしから、穏和おとなしいづくめ、丁寧づくめ、謙遜づくめ。デスと言はずにゴアンスと言つて、其度ちよいと頭を下げるといつたふう。風采は余り揚つてゐなかつた。
して乘つた時の窮屈きうくつさ。洋服着た男とでも肩が擦れ/\になると、譯もなく身體が縮んで了つて、ちよいと首を動かすにも頸筋が痛い思ひ。とまるかと思へば動き出す。動き出したかと思へば停る。
天鵞絨 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
重兵衛それが平生ひごろの遺恨で、ちよいとした手紙位は手づから書けるを自慢に、益々頭が高くなつた。規定きまり以外の村の費目いりめの割当などに、最先まつさきに苦情を言出すのは此人に限る。其処へ以て松太郎が来た。
赤痢 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)