亀甲きっこう)” の例文
旧字:龜甲
広東カントン出来の錦襴の筒袖に蜀紅錦の陣羽織を羽織り、亀甲きっこう模様の野袴を穿き、腰に小刀を帯びたままゴロリとばかりに寝ていたが
曼荼羅には亀甲きっこう形が縫いつけられているが、そのひとつごとに、この文章(原文は四字ずつの漢文)をあらわしたのだという。
大和古寺風物誌 (新字新仮名) / 亀井勝一郎(著)
篠竹しのだけで作った小型の「めざる」は編み方が亀甲きっこうの目になっていてとても形が可愛らしく、旅する者は誰しも一つ買わないではいられないでありましょう。
手仕事の日本 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)
こん亀甲きっこう結城ゆうき茶博多ちゃはかたの帯を甲斐かいの口に、渋く堅気につくった三次、夜が明けるが早いか亀安の暖簾のれんを潜った。
水面と金網の上部とがスレスレになると、鼠は薄赤いくちさきを、亀甲きっこう型の網の間から、出来る丈け上方に突き出して、悲しい呼吸を続けた、悲痛なあわただしい鳴声を発しながら。
孤島の鬼 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
柳のもとには、二つ三つ用心みずの、石で亀甲きっこうに囲った水溜みずたまりの池がある。が、れて、寂しく、雲も星も宿らないで、一面に散込んだ柳の葉に、山谷の落葉を誘って、塚を築いたように見える。
みさごの鮨 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
その面に亀甲形きっこうがたの模様ができる、これには、一方では弾性的不安定の問題、また対流の問題なども含まれているようであるが、この亀甲きっこう模様の亀甲形の中心にできる小さな穴から四方に放射して
自然界の縞模様 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
亀甲きっこう模様は三対の平行線の組合せとして六角形を示しているが、「いき」であるには煩雑はんざつに過ぎる。万字まんじは垂直線と水平線との結合した十字形の先端が直角状に屈折しているので複雑な感を与える。
「いき」の構造 (新字新仮名) / 九鬼周造(著)
草花を染め出した水色の小袖、亀甲きっこう模様の山袴、あり余る髪をうなじで束ね、無造作に肩へ垂らしている。
任侠二刀流 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
黒ければ漆のように、赤ければ亀甲きっこうのように光る。のり入れだという小壺は形が卵のようで、ふたが美しい、焼け具合で耀変ようへんが来ると、例の大名物油屋あぶらや肩附かたつきを想わせる。
雲石紀行 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)
堀の水は、松の影を宿して暗く静まり、りつぶしたような闇黒やみのなかに、ほの白い石垣が亀甲きっこうにつづいて大浪のごとく起伏する木立ちのむこうに、天守閣の屋根が夜空をついて望見される。
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
再び見よ、烈しくなった池の波は、ざわざわとまた亀甲きっこうそばたてる。
薄紅梅 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
あるものは家の型を示し、あるものは亀甲きっこうの形を示し驚くべき量感が迫ってくるのです。精霊への限りない信仰がなくして、どうしてこんなにも堂々たる相を捕えることが出来るでしょう。
民芸四十年 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)