両個ふたつ)” の例文
旧字:兩個
これ英国より取寄せられたる瓦斯がすストーブにて高さ四尺長さ五尺幅弐尺あり、このあたえ弐百五十円なりという。ストーブのかたわらに大小の大釜両個ふたつあり。
食道楽:春の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
この両個ふたつは毎日、頭から湯気ゆげを出して——これは形容ではない、文字通り、その時は湯気を出していたのでしょう——高さにおいての競争で際限がない。
大菩薩峠:25 みちりやの巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
鼠のずぼんのすそが見え、樺色かばいろの靴を穿き、同一おなじ色の皮手袋、洋杖ステッキを軽くつき、両個ふたつの狼を前にしつつ、自若たるその風采ふうさい、あたかも曲馬師の猛獣に対するごとく綽々しゃくしゃくとして余裕あり。
わか紫 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
マストを立て、煙を吐いて行く黒船の雄姿は、田山の眼と、心とを、両個ふたつの人影から奪うに充分でありました。
大菩薩峠:29 年魚市の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
法衣ころもそでを通して言ふ。……呼吸いきの、ふか/\と灰色なのが、人間のやうには消えないで、両個ふたつとも、其のまゝからまつて、ぱつと飛んで、湖のおもてに、名の知れぬ鳥が乱れ立つ。
妖魔の辻占 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
けれども、こゝなる両個ふたつの魔は、武士さむらい屑屋くずやさかさまつたのではないらしい。
妖魔の辻占 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
「いいえ、乳母ばあやさんにおんぶをなすって、林檎りんご両個ふたつ、両手へ。」
日本橋 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
はやい事、もう紙に両個ふたつ
婦系図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)