不悪あしからず)” の例文
所がもう五六日で出発しようといふ時になつて、Sから「種々都合悪しく旅行は出来ない、少くとも京都へは行けないから不悪あしからず……」
厄年 (新字旧仮名) / 加能作次郎(著)
守り相営み不申もうさず候然るに昨日仮葬之節追て日限御知せ可申上御約束之処前件の次第故不悪あしからず御承引可被下くださるべく候右御報道併せて御礼奉申上候也
明治劇談 ランプの下にて (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
そのため貴殿にも何事も洩らさず同婦人に自由行動をらせ候段、何卒なにとぞ不悪あしからず御諒恕ごりょうじょたまわりたく、貴殿の御骨折に対しては警察当局も感謝致居候いたしおりそうろう
山羊髯編輯長 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
「なおまた故人の所持したる書籍は遺骸と共に焼き棄て候えども、万一貴下より御貸与ごたいよの書籍もそのうちにまじり居り候せつ不悪あしからず御赦おゆるし下されたくそうろう。」
(新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
右の如く謡曲会、俳句会、短歌会、新体詩会等、会の連発にて当分の間は、のべつ幕無しに出勤致しそろ為め、不得已やむをえず賀状を以て拝趨はいすうの礼に候段そろだん不悪あしからず御宥恕ごゆうじょ被下度候くだされたくそろ。……
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
これにおられる寨主さいしゅ宋公明には、久しくあなたを慕っておられ、梁山泊一同協議のうえ、あなたを仲間にお迎えしようものと、すなわち、呉用が一策を用いた次第でした。——不悪あしからず、不悪
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「今日子供が自動車に跳ねられて死にましたものですから、悲しくてごたごたいたしております。主人もすぐお伺い出来ますかどうか分りませんが、遅れましても不悪あしからずおゆるし下さいませ。」
旅愁 (新字新仮名) / 横光利一(著)
それから又、問題が私にはつきりしてゐない為に私の答へた所でも、あなたの要求された所と一致しなかつたかも知れません。それも不悪あしからず大目おほめに見て置いて下さい。以上
なんだ、これは? ……『昨日さくじつのことは夫の罪にては無之これなく、皆浅はかなるわたくしの心より起りしこと故、何とぞ不悪あしからず御ゆるし下されたくそうろう。……なおまた御志おこころざしのほどはのちのちまでも忘れまじく』
三つの窓 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)