くださ)” の例文
其中に、一円の金貨が六ツか八ツも有升ありましたがお祖父ぢいさまはやがて其ひとつをとりいだして麗々とわたしの手のひらのせくださつた時、矢張冗談じようだんかと思ひました。
黄金機会 (新字旧仮名) / 若松賤子(著)
大聲おほごゑで『雲飛うんぴ先生せんせい、雲飛先生! さう追駈おつかけくださいますな、わづか四兩のかねで石を賣りたいばかりに仕たことですから』と、あだか空中くうちゆうひとあるごとくにさけるのに出遇であつた。
石清虚 (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
『何か其方の本を、貸してくださいませんか? 今迄遂宗教の事は、調べて見る機会も時間もなかつたんですが、此夏は少し遣つて見ようかと思ふンです。幸ひ貴女の御意見も聞かれるし……。』
鳥影 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)