三条みすじ)” の例文
旧字:三條
炬燵こたつからもぐり出て、土間へ下りて橋がかりからそこをのぞくと、三ツの水道口みずぐち、残らず三条みすじの水が一齊いちどきにざっとそそいで、いたずらに流れていた。
眉かくしの霊 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
右がわの壁に切ってある高窓の戸の隙間から、月の光が青白い細布をいたように三条みすじながれこんでいる。
泥棒と若殿 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
その丘と庭の境には丸竹まるたけすかがきをして、それに三条みすじのとげをこしらえた針金を引いてあった。
岐阜提灯 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
趙雲はよろいの胸当の下に、三歳の子をかかえながら、悪戦苦闘、次々の線を駆け破って——敵陣の大旆おおはたを切り仆すこと二本、敵の大矛おおほこを奪うこと三条みすじ、名ある大将を斬り捨てることその数も知れず
三国志:07 赤壁の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
(寒いわ。)とうつつのように、(ああ、冷たい。)とおっしゃると、そのくちびるから糸のように、三条みすじに分かれた血が垂れました。
眉かくしの霊 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
と、電燈の明るいバーが眼にいた。彼は急いでその中へ入った。二条ふたすじ三条みすじかに寒水石かんすいせき食卓テーブルえた店には、数多たくさんの客が立て込んでいた。彼はその右側へ往って腰をかけた。
水魔 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
地誌をあんずるに、摩耶山は武庫郡むこごおり六甲山の西南に当りて、雲白くそびえたる峰の名なり。山の蔭に滝谷たきだにありて、布引ぬのびきの滝の源というも風情なるかな。上るに三条みすじみちあり。
一景話題 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
宿直の姿が二階を放れて、段に沈むと、すらすらと三方へ、三条みすじ白布しらぬのを引いて立ち別れた。
式部小路 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
こっちへ来るというので道中も余所よそとは違って、あの、長良川、揖斐川いびがわ、木曾川の、どんよりと三条みすじ並んだ上を、晩方通ったが、水が油のようだから、汽車の音もしないまでに
伊勢之巻 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)