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やなぎごり
「
寒い
所爲なんでせう」と
答へて、すぐ
西側に
付いてゐる
一間の
戸棚を
明けた。
下には
古い
創だらけの
箪笥があつて、
上には
支那鞄と
柳行李が
二つ
三つ
載つてゐた。
初め村中も
倶々勸めて止ざりけり
偖も寶澤は願ひの如き身となり
旅の
用意もそこ/\に
營なみければ村中より
餞別として百文二百文分に
應じて
贈られしに
塵も
積りて山の
譬へ集りし金は都合八兩貳
歩とぞ成にける其外には
濱村ざしの
風呂敷或は
柳庫裏笈笠蜘の
巣絞の
襦袢など思々の
餞別に支度は十分なれば寶澤は