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ぜんゐんちやう
『
何卒閣下是をお
召し
下さい。』と、ニキタは
前院長の
前に
立つて
丁寧に
云ふた。『
那が
閣下のお
寐臺で。』と、
彼は
更に
新しく
置れた
寐臺の
方を
指して。
折しもモイセイカは
外から
歸り
來り、
其處に
前院長のゐるのを
見て、
直に
手を
延し
イワン、デミトリチはふと
眼を
覺し、
脱然とした
樣子で
兩の
拳を
頬に
突く。
唾を
吐く。
初め
些と
彼には
前院長に
氣が
付かぬやうで
有つたが
施て
其れと
見て、
其寐惚顏には
忽ち
冷笑が
浮んだので。