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くしけづ
鬘を
被たるやうに
梳りたりし彼の髪は
棕櫚箒の如く乱れて、
環の
隻捥げたる羽織の
紐は、
手長猿の月を
捉へんとする
状して
揺曳と
垂れり。主は見るよりさも
慌てたる顔して
彼はそれから
身體が
固まるやうに
思ひながら、
疎い
白髮の
梳られるのをも、
微に
感覺を
有した。
雞の
聲が
耳に
遠く
聞えて
消滅するのを
知つた。
彼は
遂にうと/\と
成つて
畢つた。
浴して
櫛梳りけむペリカンの濡れたる
翼の
桃色細毛