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かうぐわい
『
今頃は
馬車にでも
乘つて、
郊外へ
行つたらさぞ
好いでせう。』と、イワン、デミトリチは
赤い
眼を
擦りながら
云ふ。
さうして
京都の
月は
東京の
月よりも
丸くて
大きい
樣に
感じた。
町や
人に
厭きたときは、
土曜と
日曜を
利用して
遠い
郊外に
出た。
宗助は
至る
所の
大竹藪に
緑の
籠る
深い
姿を
喜んだ。
それは彼の
足を止めたところが
郊外にあつたからで、そこは平野神社から銀閣寺へ
行く
途中に
見える衣笠山の
夷かな姿が
直ぐ
簷の下から望まれるやうな場所にある、
貧しい家であつた。