ほし)” の例文
「はやく、おうちへはいらないと、らぬひとにつれられていってしまうがな。」と、ほしひかりをながめて心細こころぼそおもったことがありました。
古いはさみ (新字新仮名) / 小川未明(著)
くてぞありける。あゝ、何時いつぞ、てんよりほしひとつ、はたとちて、たまごごといしとなり、水上みなかみかたよりしてカラカラとながる。
妙齢 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
ひがしそらのききょうのはなびらはもういつかしぼんだようにちからなくなり、あさ白光しろびかりがあらわれはじめました。ほしが一つずつきえてゆきます。
いちょうの実 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
末男すゑを子供こどもきながら、まちと一しよ銀座ぎんざあかるい飾窓かざりまどまへつて、ほしえる蒼空あをそらに、すきとほるやうにえるやなぎつめた。
追憶 (旧字旧仮名) / 素木しづ(著)
懇意な友人の新婚披露ひろうに招かれてほしおか茶寮さりょうに行った時も、着るものがないので、袴羽織ともすべて兄のを借りて間に合せた事もあった。
道草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
ほしなほり、ほしひめつむり宿やどったら、なんとあらう! ひめほゝうつくしさにはほし羞耻はにかまうぞ、日光にっくわうまへランプのやうに。
西行のような出家こそ、出家の真実を意味するものだろうが、あれまでの真実に徹しようとした者は、暁天ぎょうてんほしといってよい。
随筆 新平家 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
というのは、いのきちが、よしむらさんにほしはなしをせがむより、いつも、よしむらさんがいのきちに、山のはなしや、みずうみはなしをさきにききだした。
ラクダイ横町 (新字新仮名) / 岡本良雄(著)
蛙君かへるくん、きみはまあなにをゆつてるんだ。ほしくには、こうしたうへの、そのもつとたかいたかあいところにある天空そらなんだよ」
ちるちる・みちる (旧字旧仮名) / 山村暮鳥(著)
そこで太郎たろう次郎じろう支度じたくをして、のこのこ布団ふとんからはいして、をあけてそとへ出ました。そらはよくれて、ほしがきらきらひかっていました。
物のいわれ (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
とりあかみどりはねをして、のどのまわりには、黄金きんまとい、二つのほしのようにきらきらひからせておりました。それはほんとうに美事みごとなものでした。
夕空ゆうぞらはしだいにくらやみのいろにつつまれ、ほそい新月しんげつゆめのような姿すがたをみせ、ほしもふたつみっつ数をましていった。
いまはそれさへ天涯でんがい彼方かなたちて、見渡みわたかぎ黒暗々こくあん/\たるうみおも、たゞ密雲みつうん絶間たへまれたるほしひかりの一二てん覺束おぼつかなくもなみ反射はんしやしてるのみである。
あしたほしをいただいてで、ゆうべに月を踏んで帰るその辛苦しんくも国家のためなりと思ってあまんずればよいが、なかなか普通人情としてあまんじてのみいるものでない。
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
それがしの宮の催したまひしほしおか茶寮さりょう独逸会ドイツかいに、洋行がへりの将校次をうて身の上ばなしせし時のことなりしが、こよひはおん身が物語聞くべきはずなり
文づかひ (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
本当ほんとうだ、どんなものを歌う必要ひつようがあるか?……彼はやさしさとかなしみでむねが一ぱいになるのをかんじた。牧場まきばを、河を、空を、なつかしいほしを、むねきしめたかった。
ジャン・クリストフ (新字新仮名) / ロマン・ロラン(著)
むかかわではSH夫人ふじんらしい、ちら/\うごほしのやうなきわめてすゞしいひとが、無邪気むじやき表情へうぜうをしてゐるのがについた。わたくしわきにゐるお転婆てんばさんが彼女かのじよめてゐた。
微笑の渦 (新字旧仮名) / 徳田秋声(著)
胸に思うてゞ御座りませうが如何いかなることか此忠兵衞におはなしを如何どうぞなされて下されませとほしさゝれて長三郎はつと計にかほあからめ面目なげに見えけるが漸々にしてかうべを下げ和郎そなた
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
百人町の一帯は、どの屋敷も、高さ五、六間もある杉丸太の先へ、杉の葉へ包んだ屋根を取り付けて、その下へとうろうを掲げてあることとて、さながらむらがるほしのように美しかった。
木はみしみしとおとを立てました。もみの木のてっぺんにつけてあるきん紙のほしが、うまくてんじょうにしばりつけてなかったら、きっと木は、あおむけにひっくりかえされたことでしょう。
すみわたった、あい色の空には、おほしさまがいちめんにきらめいていました。
無論屋根が無いので、見物の頭の上には、霜夜しもよほしがキラ/\光って居る。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
殊更ことさらつとめて他人たにん教化けうくわせんとするが如きはこれを為す者の僣越せんえつしめし、無智無謀むちむぼうしようす、る大陽はつとめてかゞやかざるを、ほしは吾人の教化けうくわはかつひかりはなたず、からざるをざればひかるなり
問答二三 (新字旧仮名) / 内村鑑三(著)
それ故大正改元のころには、山谷さんや八百善やおぜん、吉原の兼子、下谷したやの伊予紋、ほしおか茶寮さりょうなどいう会席茶屋では食後に果物を出すようなことはなかったが、いつともなく古式を棄てるようになった。
葛飾土産 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
こなダイヤとほし、凍つた藍のやま々、冠まつ、ヤホー、ヤホー
冠松次郎氏におくる詩 (新字旧仮名) / 室生犀星(著)
二十本の刀のどれにも、ほしが映っている。
花と龍 (新字新仮名) / 火野葦平(著)
眞闇まやみほしを、黎明しののめそらを、あからめ
白羊宮 (旧字旧仮名) / 薄田泣菫薄田淳介(著)
仰げば空のななほしあかきらめき
第二邪宗門 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
しろきはほしはてならん
孔雀船 (旧字旧仮名) / 伊良子清白(著)
自然界しぜんかい法則ほうそくがあれば、人間界にんげんかいにも法則ほうそくがある。どのほしても、ほこらしげに、またやすらけくかがやくのは、天体てんたい法則ほうそくまもるからだ。
アパートで聞いた話 (新字新仮名) / 小川未明(著)
やがて、とことはのやみとなり、くもすみうへうるしかさね、つきほしつゝてて、時々とき/″\かぜつても、一片いつぺんうごくともえず。
寸情風土記 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
ほしがすっかりきえました。ひがしそらしろくもえているようです。がにわかにざわざわしました。もう出発しゅっぱつもないのです。
いちょうの実 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
彼は三十分と立たないうちに、吾家わがいへ門前もんぜんた。けれどももんくゞる気がしなかつた。かれは高いほしいたゞいて、しづかな屋敷町やしきまちをぐる/\徘徊した。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
それは、まださむい春のはじめで、一ばん汽車きしゃにのるために、あけちかく、山をおりていくいのきちたちのあたまの上には、ほしがきらきらかがやいていた。
ラクダイ横町 (新字新仮名) / 岡本良雄(著)
けれどもかぶと前立まえだてのきらきらするほしひかりにおじけて、ただ口から火をくばかりで、そばへ近寄ちかよることができません。
大江山 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
うんほしかゝってあるさるおそろしい宿命しゅくめいが、今宵こよひえんはしひらいて、てたわが命數めいすうを、非業無慚ひごふむざん最期さいごによって、たうとするのではないからぬ。
民部みんぶはものをいわなかった。小文治も黙然もくねんとふかいいきをつくのみだった。蔦之助もまた暗然あんぜんと言葉をわすれて、無情むじょうほしのまたたきになみだぐむばかり……
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
村をすぎていったじぶんには、あたりはとっぷりと日がくれ、美しいほしがきらきらと空にかがやきはじめていた。
どつちもその所信しよしんてません。そのうちに、とつぷりとがくれて、つきがでました。ほしもでました。
ちるちる・みちる (旧字旧仮名) / 山村暮鳥(著)
まど硝子越がらすごしに海上かいじやうながめると、電光艇でんくわうていほしひかりびて悠然いうぜん波上はじやううかんでる、あゝこのていもかく竣成しゆんせいした以上いじやうは、いまから一週間いつしゆうかんか、十以内いないには、萬端ばんたん凖備じゆんびをはつて
こと其目そのめほしのやうで、えずわたしかほては、こゝろとろかさうとしてゐるやうなこびつくる。
背負揚 (新字旧仮名) / 徳田秋声(著)
もつ野道のみち山路やまみちは云も更なり都合つがふよりてはあさほしいたゞくれには月をふん旅行りよかうなす事往々まゝあるにより先生をたのみ劔術をまなびなば道中するにも心強くかつ賊難ぞくなんふせぐ一端共成事なれば此趣きを
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
あたりはひっそりとしていた。ゴットフリートの顔にうかんでる神秘的しんぴてきな感じに、クリストフも引きこまれていった。地面じめんかげにおおわれており、そらはあかるかった。ほしがきらめきだしていた。
ジャン・クリストフ (新字新仮名) / ロマン・ロラン(著)
ほしのみひかったそらしたに、二つのかたちは、いぬごとくにからっていた。
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
水漬みづや、——今宵こよひほし
白羊宮 (旧字旧仮名) / 薄田泣菫薄田淳介(著)
あァれはほたるか、ほし
とんぼの眼玉 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
こなダイヤのほしした
冠松次郎氏におくる詩 (新字旧仮名) / 室生犀星(著)
つききよし、ほししろ
寡婦の除夜 (新字旧仮名) / 内村鑑三(著)
ほしまつりえんなれば
孔雀船 (旧字旧仮名) / 伊良子清白(著)
あたりは、すっかりくらくなって、さらさらとかぜがとうもろこしのらして、あたまうえには、ほしひかりが、きらきらとかがやいていました。
ある夜の姉と弟 (新字新仮名) / 小川未明(著)