夕日ゆうひ)” の例文
いつも朝日がさすたんびに、その木のかげ淡路あわじの島までとどき、夕日ゆうひが当たると、河内かわち高安山たかやすやまよりももっと上まで影がさしました。
古事記物語 (新字新仮名) / 鈴木三重吉(著)
東都の西郊目黒めぐろ夕日ゆうひおかというがあり、大久保おおくぼ西向天神にしむきてんじんというがある。ともに夕日の美しきを見るがために人の知る所となった。
たちまち、うみうえ真紅まっかえました。夕日ゆうひしずむのです。この光景こうけいると、ちょうは、ふたたびばらの姿すがたおもしました。
ちょうと怒濤 (新字新仮名) / 小川未明(著)
今、浜べに立って見わたすに、海上かいじょうに大きい旗のような雲があって、それに赤く夕日ゆうひの光が差している。この様子では、多分今夜こんやの月は明月めいげつだろう。
万葉秀歌 (新字新仮名) / 斎藤茂吉(著)
玉はまるで噴火ふんかのようにえ、夕日ゆうひのようにかがやき、ヒューと音を立ててまどから外の方へんで行きました。
貝の火 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
目黒の停車場ステーションは、行人坂ぎょうにんざかに近い夕日ゆうひおかを横に断ち切って、大崎村に出るまで狭い長い掘割になっている。
駅夫日記 (新字新仮名) / 白柳秀湖(著)
粕谷田圃に出る頃、大きな夕日ゆうひが富士の方に入りかゝって、武蔵野一円金色こんじきの光明をびた。都落ちの一行三人は、長いかげいて新しい住家すみかの方へ田圃を歩いた。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
車漸く進みゆくに霧晴る。夕日ゆうひ木梢こずえに残りて、またここかしこなる断崖だんがいの白き処を照せり。忽にじ一道いちどうありて、近き山の麓より立てり。幅きわめて広く、山麓さんろくの人家三つ四つが程を占めたり。
みちの記 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
その顔は、金色こんじきもやのなかにしずんでゆく夕日ゆうひの残りのひかりに照らされていた。クリストフの言葉はのどもとにつかえた。ゴットフリートは目をなかばとじ、口を少しあけて、ぼんやり微笑ほほえんでいた。
ジャン・クリストフ (新字新仮名) / ロマン・ロラン(著)
もううすれかけたあき夕日ゆうひの中に、白いきくはながほのかなかおりをたてていました。くずなんとなくうるんださびしい気持きもちになって、われわすれてうっかりとたましいしたようになっていました。
葛の葉狐 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
これがかの夕日ゆうひもり名高なだかく、としわか閨秀をんな樂師がくしのなれのはてであらうとは!
ちるちる・みちる (旧字旧仮名) / 山村暮鳥(著)
「ほら、あのがそうよ。」と、とみさんがいいました。そこには、青々あおあおとした、一ぽんが、夕日ゆうひひかりびていました。
芽は伸びる (新字新仮名) / 小川未明(著)
さびしくなったたんぼほうから夕日ゆうひひかりけ、やってきて、このうつくしい、あかはなたときに、とんぼは、どんなによろこんだでありましょう。
寒い日のこと (新字新仮名) / 小川未明(著)
うみ夕日ゆうひが、こんなにあかくうつるのは、おじいさん、おかあさんが、そらからあたしをていらっしゃるのかしら。」
青い玉と銀色のふえ (新字新仮名) / 小川未明(著)
とりたちが、この姿すがたあてに、くもはるかのかなたからんでくるとおもうと、はいっそうたか背伸せのびをするように、夕日ゆうひなかかがやいたのでした。
大きなかしの木 (新字新仮名) / 小川未明(著)
しかし、それは、西風にしかぜであって、たかみねすべった夕日ゆうひは、ゆきをはらんで黒雲くろくものうずなかちかかっていたのです。
深山の秋 (新字新仮名) / 小川未明(著)
ぼくも、おかねすよ。」と、小山こやまが、いいました。赤土あかつちはらっぱには、赤々あかあかとして、夕日ゆうひがうつっていました。
赤土へくる子供たち (新字新仮名) / 小川未明(著)
無心むしんくこともあったし、また、はてしないとおくをあこがれたこともあったでしょう。それは、夕日ゆうひはなのごとく、うつくしくもえるときばかりでありません。
たましいは生きている (新字新仮名) / 小川未明(著)
やがて、おんな姿すがたは、ちょうとなりました。そして、夕日ゆうひそらかって、どこへとなくんでゆきました。
ちょうと三つの石 (新字新仮名) / 小川未明(著)
かれは、高原こうげん一人ひとりとおるのもそんなにさびしいとはおもわなかったのです。夕日ゆうひは、やましずみかかって、ほんのりとあまりのほのおゆきうえらしていました。
おおかみと人 (新字新仮名) / 小川未明(著)
侍女こしもとたちがってげる金銀きんぎんかがやきと、おひめさまのあか着物きものとが、さながらくもうような、夕日ゆうひうつ光景こうけいは、やはりりく人々ひとびとられたのです。
赤い姫と黒い皇子 (新字新仮名) / 小川未明(著)
二人ふたりは、同時どうじさけびました。あか夕日ゆうひは、ちょうど波間なみましずもうとしています。二人ふたりは、とおあるいてきたみちをかえりながら、いわうえこしろしてやすみました。
トム吉と宝石 (新字新仮名) / 小川未明(著)
かれ山茶花さざんかうえまりました。そこにも、あたたかな夕日ゆうひひかりが、赤々あかあかとしてっていました。
寒い日のこと (新字新仮名) / 小川未明(著)
晩方ばんがたわたし往来おうらいで、おともだちとあそんでいました。夕日ゆうひがあかあかと、とおく、白壁しらかべにうつっていました。
白壁のうち (新字新仮名) / 小川未明(著)
またあちらからはこをしょってとぼとぼと夕日ゆうひひかりびながらあるいてくるじいさんにあいました。
どこで笛吹く (新字新仮名) / 小川未明(著)
盛夏せいかでも、白雪はくせつをいただくけんみねは、あお山々やまやまあいだから、夕日ゆうひをうしろに、のぞいていました。
しいたげられた天才 (新字新仮名) / 小川未明(著)
夕日ゆうひが、黄色きいろはやしあいだいろどってしずみかけたころから、はげしいかぜとなりました。ちょうど、このとき、地主じぬしのおじいさんは、かんかんにおこって、あちらからやってきました。
高い木と子供の話 (新字新仮名) / 小川未明(著)
もし木立こだちは、そのけむりが、自分じぶんたちのしかばねけむりであったとったら、どんなにおどろいたことでしょう。やがて、夕日ゆうひしずんでくらくなると、燈火あかりがちらちらときらめきはじめました。
縛られたあひる (新字新仮名) / 小川未明(著)
あかあかとみずうえをいろどって、夕日ゆうひしずみました。みずなかは、いっそう、くらく、うるわしいものにおもわれました。このとき、ぎんのおぼんながしたように、つきらしたのです。
なまずとあざみの話 (新字新仮名) / 小川未明(著)
そらをかすめてれは、たがいにおくれまいとしました。そして、夕暮ゆうぐがたになると深林しんりんや、花園はなぞのりてやすんだのでした。あか夕日ゆうひは、かれらのかなしくうつりました。
北海の波にさらわれた蛾 (新字新仮名) / 小川未明(著)
あちらのにわいた、さるすべりのはなも、一は、あかくきれいだったが、そのさかりをすぎてしまいました。夕日ゆうひが、西空にしぞらにしずむと、北風きたかぜつめたさをかんじるようになりました。
さか立ち小僧さん (新字新仮名) / 小川未明(著)
とお水平線すいへいせんは、くろく、くろく、うねりうねって、られました。そら血潮ちしおのようにめて、あか夕日ゆうひは、いくたびか、なみあいだしずんだけれど、若者わかものふねは、もどってきませんでした。
海のまぼろし (新字新仮名) / 小川未明(著)
まだ、そのうたがいのけぬ、二、三にちのちのことです。わたしは、あか夕日ゆうひが、うみしずむのをながめていました。すると、うしろの砂山すなやまのあたりで、ハーモニカのがしました。
たましいは生きている (新字新仮名) / 小川未明(著)
夕日ゆうひは、かさなりった、たかやまのかなたにしずんだのであります。さんらんとして、百みだれている、そして、いつも平和へいわ楽土らくどが、そこにはあるもののごとくおもわれました。
深山の秋 (新字新仮名) / 小川未明(著)
「おれにも、あんな子供こども時分じぶんがあったのだ。」と、かんがえると、きんさんのには、人通ひとどおりのはげしい、あぶらのこげつくにおいがただよう、せま夕日ゆうひたるまち景色けしきかんでくるのです。
春風の吹く町 (新字新仮名) / 小川未明(著)
今度こんど、キャッチボールをしようね。」と、らないは、いいました。そしてまた、自転車じてんしゃのうしろに正吉しょうきちくんをせておくってくれました。くもあいだ夕日ゆうひは、あかかったのでした。
少年と秋の日 (新字新仮名) / 小川未明(著)
ついに、ぼくは、あるのこと、ほこりをあびながら、しろくかわいた街道かいどうあるいていった。港町みなとまちへいけば、おばさんにあえるとおもったのだ。いつしか夕日ゆうひ松林まつばやしなかにしずみかけた。
はたらく二少年 (新字新仮名) / 小川未明(著)
夕日ゆうひは、もうしずんでしまって、おそろしい灰色はいいろくもが、みねいただきからのぞいていました。
深山の秋 (新字新仮名) / 小川未明(著)
もう永久えいきゅうに、あの姿すがたられないとおもうと、ちょうは、また物狂ものくるおしく、昨日きのうのように、そらたかがったのです。うつくしい花弁かべんのようにきずついたちょうの姿すがたは、夕日ゆうひかがやきました。
ちょうと怒濤 (新字新仮名) / 小川未明(著)
二人ふたりは、一つの砂山すなやまがりますと、もう、まえには、さおうみが、がっていました。そしてなみおとが、なくこっています。うみにも、夕日ゆうひ赤々あかあかとさしていました。
女の魚売り (新字新仮名) / 小川未明(著)
あるのこと、かれは、つかれたあしきずりながら、さびしいむかし城跡しろあととおったのであります。すると、こわれかかった石垣いしがきあいだに、夕日ゆうひひかりけて、ぴかぴかかがやいているものがありました。
三つのかぎ (新字新仮名) / 小川未明(著)
つつがなく、やがて、そのれようとしていました。うみうえそらを、いぶしぎんのようにいろどって、西にしかたむいた夕日ゆうひあかえていました。人々ひとびとは、おいおいにその広場ひろばからりました。
港に着いた黒んぼ (新字新仮名) / 小川未明(著)
おおきなはねをはばたいて、にわさきにりようとした刹那せつな真紅まっかなばらのはなは、もう寿命じゅみょうがつきたとみえて、おともなく、ほろりほろりと、金色きんいろびた夕日ゆうひひかりなかくだけてるところでありました。
ちょうと怒濤 (新字新仮名) / 小川未明(著)
今日きょうも、夕日ゆうひは、まち白壁しらかべめて、しずかにれてゆきました。
二番めの娘 (新字新仮名) / 小川未明(著)
なみは、あおたまにうつるうつくしい夕日ゆうひをながめていいました。
青い玉と銀色のふえ (新字新仮名) / 小川未明(著)
山茶花さざんかは、夕日ゆうひに、あか花弁はなびらをひらめかしながら
寒い日のこと (新字新仮名) / 小川未明(著)