下男げなん)” の例文
ぞなし居たり感應院が食事しよくじ仕果しはてし頃を計り寶澤も油掃除あぶらさうぢなしはて臺所だいところへ入來り下男げなん倶々とも/″\食事をぞなしぬむねに一物ある寶澤が院主ゐんしゆの方を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
「こっちで言いたい言葉じゃ、貴公、山県狂介のところで、下男げなんのような居候いそうろうのような真似まねをしておるとかいう話じゃが、まだいるのか」
山県有朋の靴 (新字新仮名) / 佐々木味津三(著)
さむかぜそらいています。あわれな下男げなんはいつしかつかれてうとうととなったかとおもうと、いつのまにか、みじかふゆれてしまいました。
北の国のはなし (新字新仮名) / 小川未明(著)
老人ろうじんはいいわけをしてあやまりました。そして、仔牛こうしはあずかっておくことにして、下男げなん物置ものおきほうへつれていかせました。
花のき村と盗人たち (新字新仮名) / 新美南吉(著)
下男げなんおとこ使用人しようにん)が病気びょうきになれば、みずくみもしました。女中じょちゅうおんなのおてつだいさん)にさしつかえがあれば、台所だいどころのてつだいもしました。
そのあいだに、たにしの子はひとりではきはき、下男げなんたちにさしずをして、お米を馬からおろして、くらみこませました。
たにしの出世 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
神が汝に与えし貧ちょう好機械を利用して汝の徳を高め汝の家を清めよ、快楽なる「ホーム」を造るに風琴の備附そなえつけ下婢かひ下男げなん雇入やといいれを要せず
基督信徒のなぐさめ (新字新仮名) / 内村鑑三(著)
世田ヶ谷の家には庭掃除の下男げなん雇婆やといばばがいるものの、鶴子は老人が日々の食事を始め衣類や身のまわりの事に不自由しているらしいのを見て
つゆのあとさき (新字新仮名) / 永井荷風(著)
主人五郎兵衛は六十二歳、妻つねは五十歳になつて、娘かつ、孫娘かくのほか家内かない下男げなん五人、下女げぢよ一人を使つてゐる。上下十人暮しである。
大塩平八郎 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
じゅりあの・吉助きちすけは、肥前国ひぜんのくに彼杵郡そのきごおり浦上村うらかみむらの産であった。早く父母に別れたので、幼少の時から、土地の乙名三郎治おとなさぶろうじと云うものの下男げなんになった。
じゅりあの・吉助 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
それで準備じゆんびをして、下男げなん藥箱くすりばこかつがせ、多田院ただのゐんからのむかへのしやきにてて、玄竹げんちくはぶら/\と北野きたのから能勢街道のせかいだう池田いけだはうあるいた。
死刑 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
はかまのももだちたかくとって、たすきをかけ、下男げなんのように、せっせと畳の血のり、欄間の血しぶきをふいておりました。
亡霊怪猫屋敷 (新字新仮名) / 橘外男(著)
四十を一つ二つも越えたらしい武家の御新造ごしんぞふうの女が、ひとりの下男げなんを供につれて大師の門前にさしかかった。
(新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
ときあたかも、きやくくわいしたところ入口いりくち突伏つツぷして下男げなん取次とりつぎを、きやく頭越あたまごしに、はな仰向あふむけて、フンと
画の裡 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
祖母は台所の方に駆け去ったがすぐにまた戻って来て、下男げなん用のふちのかけた木椀きわんを一つ私のふところにねじ込んだ。
上にいる人たちは、みものがほしくてなりませんので、こんどは、主人しゅじん下男げなんにむかっていいました。
ある日、一台の馬車がそのうちの前に止りました。馭者ぎょしゃが戸を開けると、大屋敷の父親や、看護婦が下りました。すると、玄関から下男げなんが二人駈け降りて来ました。
これでもわかいじぶんにはわたしは……いや、ある大音楽家の下男げなんでした。まあおうむのように、わたしは主人の口まねをしておぼえたのですね。それだけのことです
やがて、下男げなんが来て、もみの木を小さくおって、ひとたばのまきにつかねてしまいました。それから大きなゆわかしがまの下へつっこまれて、かっかと赤くもえました。
そのころ四十ばかりになる下男げなんと十二歳になる孫娘と、たった三人、よそ目にはサもさびしそうにまた陰気らしゅう住んでいたが、実際はそうでなかったかもしれない。
初恋 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
主人の松本さん夫婦のほかに、下女げじょ下男げなんや馬……そして、一番奥の洋室に、変なふたり……。
金の目銀の目 (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
じつはね、おまえのとこに下男げなんがなかったもんだから今日きょう一人見附みつけて来てやったんだ。蟹にしておいたがね、ぴしぴし遠慮えんりょなく使つかうがいい。おい。きさまこのあなにはいって行け。
サガレンと八月 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
教育するという事がはたしてわれわれの理想であるとすれば、必ずしも役人となるを要しない。家にいて下女げじょ下男げなんの教育もできる。また自分の女房にょうぼう子女を教育することもできる。
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
父の日記は、大凡おほよそ農業日記であつて、そのなかに、ぽつりぽつり、僕に呉れた小遣銭こづかひせんの記入などがあるのである。明治廿二年のくだりに、宝泉寺え泥ぼうはひり、伝右衛門下男げなんもちて表よりゆく
念珠集 (新字旧仮名) / 斎藤茂吉(著)
これなんでも下婢かひ下男げなん窃取くすねるに相違さうゐない、一ばん計略はかりごともつためしてやらう。
おばあさんは、仕事しごとの手つだいに、下男げなん下女げじょをやとうこともできたでしょう。けれども、じぶんの子どもたちが、おばあさんを残していってしまってからは、身ぢかに他人たにんを見たくなかったのです。
子供の時分に姉の家に庫次という眇目すがめの年取った下男げなんが居た。
KからQまで (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
出し呉よと云に下男げなん彌助やすけは此體を見て大いに驚きハツと思ひながらなほもよく/\見るに身の彌立よだつばかりに恐ろしきなが大小を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
外国人の宣教師の家で下男げなんをしたりして、さまざま苦労したすえ、りくつがすきで仕事がきらいになって村にもどったという人でありました。
和太郎さんと牛 (新字新仮名) / 新美南吉(著)
下男げなんは、りについては、あまり知識ちしきがなかったものですから、そうきくとよろこびました。そして、いけをさがしてあるきました。
北の国のはなし (新字新仮名) / 小川未明(著)
といって、しろぬのを一たんしました。下男げなんんだうまぬのたんになれば、とんだもうけものだとおもって、さっそくうまりかえっこをしました。
一本のわら (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
さうして下男げなんには、菱形ひしがたの四かくへ『』の合印あひじるしのいた法被はつぴせてくれた。兩掛りやうがけの一ぱうには藥箱くすりばこをさめ、の一ぱうには土産物みやげものはひつてゐた。
死刑 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
そのの伝吉の一生はほとんどこの怒のために終始したと云ってもよい。伝吉は父をほうむったのち長窪ながくぼにいる叔父おじのもとに下男げなん同様に住みこむことになった。
伝吉の敵打ち (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
それだけに腰元もいなければ供回り若党も一切なく、母親と女中と下男げなん夫婦と、いつ行って見てもひっそりと静まり返っている小人数の棚田家というものは
棚田裁判長の怪死 (新字新仮名) / 橘外男(著)
医者いしや内弟子うちでし薬局やくきよく拭掃除ふきさうぢもすれば総菜畠さうざいばたけいもる、ちかところへは車夫しやふつとめた、下男げなん兼帯けんたい熊蔵くまざうといふ、其頃そのころ二十四五さい稀塩散きゑんさん単舎利別たんしやりべつぜたのをびんぬすんで
高野聖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
ぜんたいを引き取るというのは、その養育料よういくりょうをはらってもらうためではない、はたらかせるためなのだ。それから金を取り上げこそすれ、給金きゅうきんなしの下男げなん下女げじょに使うのだ。
次郎左衛門じろざえもん野州やしゅう佐野の宿しゅくを出る朝は一面に白い霜がりていた。彼に伴うものは彼自身のさびしい影と、忠実な下男げなん治六じろくだけであった。彼はそのほかに千両の金と村正むらまさの刀とを持っていた。
籠釣瓶 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
「ぼくは、もうずいぶん長いあいだ下男げなんしごとをやってきた。まるで、きみたちにばかにされていたようなもんだ。ここらでひとつやくめをかえて、ちがったやりかたをしてみようじゃないか。」
小僧こぞう、来い。いまおれのとこのちょうざめの家に下男げなんがなくてこまっているとこだ。ごちそうしてやるから来い。」ったかと思うとタネリはもうしっかり犬神いぬがみ両足りょうあしをつかまれてちょぼんと立ち
サガレンと八月 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
はなるゝはかなしけれど是も修行しゆぎやうなれば決して御案おあんじ下さるなとて空々敷そら/″\しく辭儀じぎをなし一先感應院へ歸り下男げなん善助に向ひ明朝あした早く出立すれば何卒握飯にぎりめし
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
下男げなんは、そうくとまたよろこばずにはいられませんでした。おかねをもらい、品物しなものをもらってうちつことができたら、どんなにしあわせなことだろう。
北の国のはなし (新字新仮名) / 小川未明(著)
けれどいくらいいうまでも、んだうまをかついでいくことはできないので、それには下男げなん一人ひとりあとのこして、んだうま始末しまつをさせることになりました。
一本のわら (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
旦那衆だんなしゅうっちゃんが、下男げなんについてあそびにて、下男げなんにせがんで仔牛こうしたせてもらったのかもれません。
花のき村と盗人たち (新字新仮名) / 新美南吉(著)
玄竹げんちく意氣揚々いきやう/\と、ふねなかへ『多田院御用ただのゐんごよう』の兩掛りようがけをゑて、下男げなん二人ふたりそれを守護しゆごする位置ゐちひざまづいた。
死刑 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
医員もえ、看護婦も多数い、女中が来、乳母が来、書生や下男げなんが殖えて、私が静岡の親を顧みるのも、二月ふたつきに一度、三月みつきに一度……この頃はまことにまれになってきました。
棚田裁判長の怪死 (新字新仮名) / 橘外男(著)
えつさ、こらさ、とむぎ背負しよつて、下男げなんどもが出直でなほして、薪雜木まきざつぽうぐすねいて
麦搗 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
そんな古いマントルを着ていらっしゃれば下男げなんか何かと思われますもの。
三つの宝 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
塚田巡査は町の者共を従え、市郎は我家の職人や下男げなんを率いて、七兵衛老翁じじいに案内させ、前後二手に分れて現場げんじょう駈向かけむかった。夜の平和は破られて、幾十の人と火とが、町尽頭まちはずれの方へ乱れて走った。
飛騨の怪談 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
そして朝になると、顔のまっ下男げなんが来て見て
ツェねずみ (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)