“懐”のいろいろな読み方と例文
旧字:
読み方割合
ふところ39.1%
なつ17.1%
いだ15.0%
なつか14.4%
おも5.6%
ふとこ3.4%
なず0.7%
なつかし0.6%
0.5%
おもい0.4%
ゆか0.4%
なつこ0.3%
おもひ0.2%
した0.2%
0.2%
フトコロ0.2%
ほところ0.1%
いと0.1%
かい0.1%
くつ0.1%
なじ0.1%
なづ0.1%
ぽっぽ0.1%
むね0.1%
イダ0.1%
オム0.1%
クハイ0.1%
ナツコ0.1%
ホド0.1%
0.1%
(注) 作品の中でふりがなが振られた語句のみを対象としているため、一般的な用法や使用頻度とは異なる場合があります。
すると奥さんはふところからかがみを出して、それを千枝ちやんに渡しながら「この子はかうやつて置きさへすれば、決して退屈しないんです」
東京小品 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
そのとき、露子つゆこは、いうにいわれぬなつかしい、とおかんじがしまして、このいいおとのするオルガンはふねってきたのかとおもいました。
赤い船 (新字新仮名) / 小川未明(著)
聴覚機関の故障を発見した翌日は出勤前に寄ったと見えて、晩に報告があった。初老に興味をいだいている僕は無論聞き落さなかった。
親鳥子鳥 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
「電車なんぞ、いやで御在ます。でも、たまに参りますと何ですか、いやだいやだとは思ひながらやつぱりなつかしい気がいたします。」
来訪者 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
両管領との大戦争に里見方は石浜、五十子いさらこ忍岡しのぶがおか、大塚の四城を落しているが、その地理的位置が江戸城をおもわせるようなのはない。
八犬伝談余 (新字新仮名) / 内田魯庵(著)
そこへ北山も子供も風呂ふろから上がって来た。葉子は紅茶に水菓子なぞ取り、ふところに金もあるので、がらりと世界が変わったように見えた。
仮装人物 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
皆敬い、なずいていたが、日もたず目を煩って久しくえないので、英書をけみし、数字を書くことが出来なくなったので、弟子は皆断った。
黒百合 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
余計に私なんざなつかしくって、(あやちゃんお遊びな)が言えないから、合図の石をかちかち叩いては、その家の前を通ったもんでした。
草迷宮 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
此様こんな女の人は、多勢の中ですもの、幾人もあったでしょうが、其あかさんをいて御居での方が、妙に私の心を動かしたのでした。
昇降場 (新字新仮名) / 広津柳浪(著)
彼らの江戸獄中にあるや、ただ法廷において相まみゆるを得るのみ。しかれどもその唱和の詩を読めば、人をしておもいに禁ぜざらしむるものあり。
吉田松陰 (新字新仮名) / 徳富蘇峰(著)
そして何ともいえないゆかしさを感じて、『ここだ、おれの生まれたのはここだ、おれの死ぬのもここだ、ああうれしいうれしい、安心した』
河霧 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
冬枯の畑の起伏も面白く、林には冬の小鳥が人なつこそうに鳴いて、江戸の町の真中から来ると、命も伸びそうです。
こたびとてもまた同き繰言くりごとなるべきを、何の未練有りて、いたづらに目をけがし、おもひきずつけんやと、気強くも右より左に掻遣かきやりけるなり。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
老母をわすれ、妻子をしたわぬにてはなけれど、武士のぎりに命をすつる道、ぜひに及ばぬところと合点して、深くなげき給うべからず。
教会が一層つかしくて——彼人あのかたの影が見えるとたゞ嬉しく、如何どうかして御来会おいでなさらぬ時には、非常な寂寞せきばくを感じましてネ、私始めは何のこととも気がつかなかつたのですが、或夜
火の柱 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)
正成は、つらさの余り、知れきッている立場なのに、そう反問した。——窮鳥キユウテウフトコロニ入レバ猟師モ撃タズ——そんな古い言葉も、今の彼には切実だった。
私本太平記:03 みなかみ帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ほところから出して見せて、「そら、この通り書いたあるやろ、——下名ハ下名ノ妻ガ妻タル者ノ行為ニもとルコトナキヨウ——」
(新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
「悪徒の友なるいとしきは狼の歩みしづかかに共犯人かたうどの如く進み来りぬ。いと広き寝屋ねやの如くに、空おもむろとざさるれば心焦立いらだつ人はたちまち野獣の如くにぞなる……」
夜あるき (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
しかし善直と京水とが同人ではあるまいか、京水が玄俊の子でなくて、初代瑞仙の子ではあるまいかといううたがいが、今にいたるまでいまだ全くわたくしのかいを去らない。
渋江抽斎 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
郊外がドシドシつぶされて、人家や製造場などが建つことである、建つのは構わぬが、ユトリだとか、くつろぎだとかいう気分が、くなって、堪まらないほど窮屈になる、たとえやにこくても
菜の花 (新字新仮名) / 小島烏水(著)
おうそれ/\彼のプラトが大変に能くなじんで居る人よプラトが己に噛附かみつこうとした時内儀がそう云た
血の文字 (新字新仮名) / 黒岩涙香(著)
急に向うから私になづいてくるように、その少女たちも、その名前を私が知りさえすれば、向うから進んで、私に近づいて来たがりでもするかのように。
麦藁帽子 (新字新仮名) / 堀辰雄(著)
「オホオホオホほんとにサ、仲々小悪戯こいたずらをしたもんだけれども、このはズーたいばかり大くッても一向しきなおぽっぽだもんだから、それで何時まで経ッても世話ばッかり焼けてなりゃアしないんだヨ」
浮雲 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
坐相撲すわりずもうはなし、体操、音楽のうわさ、取締との議論、賄方まかないかた征討の義挙から、試験の模様、落第の分疏いいわけに至るまで、およそ偶然にむねに浮んだ事は、月足らずの水子みずこ思想
浮雲 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
高弁コウベン、年来聖人ショウニンニ深キ信仰ヲイダキ、キコユルトコロノ邪見ハ、在家ノ男女ナンニョ等、聖人ノ高名ヲカリテ妄説モウゼイスルトコロト思イ居タリ。コノ故ニマダ以テ一言モ聖人ヲ誹謗ヒボウセズ。
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
析鈴サクスヾの五十鈴のすゞの 鈴屋の大人の命の……学子マナビコの兄とさしたる 春べ咲く 藤垣内フヂノカキツの本居の其翁(大平)しも、オムがしみ、称へましけるそこをしも、あやに尊み、そこをしもあやにゆかしみ
橘曙覧評伝 (新字旧仮名) / 折口信夫(著)
長サ六寸ばかり発込ハツコミクハイ剣よりハちいさけれども、人おうつに五十間位へたママゞりてハ打殺すことでき申候。其つれが今手もとにこれあり候得ども、さしあげ不申候。
再元に立ち直る人ナツコい、甘美な情趣を動したものだが、此が昔のどうま声のなごりかと思へば、懐しさを感じさせられたものであつた。
市村羽左衛門論 (新字旧仮名) / 折口信夫(著)
夕早く昏るゝ山ホド。燈をつけてねりのぼり来る御神楽のレツ
鵠が音:01 鵠が音 (新字旧仮名) / 折口春洋(著)
彼の久しくハラんでゐた、溌剌たる処女の誕生であつた。