麁忽そこつ)” の例文
眞實まこととなし斷りたりしは麁忽そこつ千萬此方はげんに見たるといふ證據あらねば其醫師いしやの云しがそにて大藤のむすめに病の氣も有らぬを
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
(先晩の麁忽そこつは、不残のこらず手前でございます。愛吉さんは宵から寝ていて何にも知りやしねえもんですから、申訳のために手前が身体からだ退きます。)
式部小路 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
秀郷が、竜宮から得た巻絹や俵米は尽きなんだが、一朝麁忽そこつな扱いしてから出やんだちゅう談に似た事も、諸邦に多い。
「ええ全く妙なのですが、先生があまり真面目だものですから、つい気がつきませんでした」とあたかも主人に向って麁忽そこつびているように見える。
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
不思議にも無難に踏留ふみとどまりし車夫は、この麁忽そこつに気を奪れて立ちたりしが、面倒なる相手と見たりけん、そのままかぢを回して逃れんとするを、俥の上なる黒綾くろあや吾妻あづまコオト着て
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
手前何処どこの者か知らんけれども、人の前を通る時に挨拶して通れ、ことにコレ武士の腰にたいして歩く腰の物の柄前に足をかけて、麁忽そこつでござると一言ひとこと謝言わびごとも致さず、無暗むやみに参ることが有るか
真景累ヶ淵 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
はじ息子せがれ長三郎にもはなしたるに息子は然もこそあらんと思ひ夫婦はしきり麁忽そこつ再度ふたゝび婚姻を結んとて翌日忠兵衞を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
されどかくそろひて好き容量きりよういまだ見ずと、静緒は心に驚きつつ、蹈外ふみはづせし麁忽そこつははや忘れて、見据うる流盻ながしめはその物を奪はんとねらふが如く、吾を失へる顔は間抜けて、常は顧らるるかたちありながら
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
僞者にせものとの過言其意を得ず何か證據しようこが有て左樣には申すや返答聞んと詰寄つめよれば伊賀亮どうずる色なくたしかに證據なくして麁忽そこつの言を出さんや其證據しようこを聞んとならばれい
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)