鳴声なきごえ)” の例文
旧字:鳴聲
そのいとわしい鳴声なきごえは、日の暮れがにわかにちかづいて来たように、何という訳もなく人の心を不安ならしめる。
曇天 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
また道中どうちゅうどこへまいりましてもれい甲高かんだか霊鳥れいちよう鳴声なきごえ前後ぜんご左右さゆう樹間このまからあめるようにきこえました。
オットーン、オットーンというはおっとのことなり。末の方かすれてあわれなる鳴声なきごえなり。
遠野物語 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
園内を歩くと、せみのヌケがら幾個いくつも落ちて居る。昨夜は室内で、小さなものゝ臨終りんじゅう呻吟うめきの様なかすかな鳴声なきごえを聞いたが、今朝けさ見ればオルガンの上によわりはてたスイッチョが居た。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
と不思議にも、鵞鳥の鳴声なきごえがぱつたりやみました。
エミリアンの旅 (新字旧仮名) / 豊島与志雄(著)