高麗縁こうらいべり)” の例文
狩野永徳かのうえいとくのふすま絵にたたずみ、繧繝縁うんげんべり高麗縁こうらいべりの畳に目をみはり、みがき立てた金壁に気もすくみ、恍惚こうこつとした心地で白洲へ降りると
新書太閤記:06 第六分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
女は驚ろいたさまもなく、うろうろする黒きものを、そと白き指で軽く払い落す。落されたる拍子ひょうしに、はたと他の一疋と高麗縁こうらいべりの上で出逢であう。
一夜 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
白地に黒く雲形を織り出したような高麗縁こうらいべりの畳まで、この木曾路を通る諸大名諸公役の客間にあててあるところも似ていた。
夜明け前:01 第一部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
御簾みすがかかっており、蜘蛛くもの巣が張られてあり、畳は、ちゃんと高麗縁こうらいべりがしきつめたままだが、はや一種の廃気が湧いて、このまま置けばフケてしまう。
大菩薩峠:41 椰子林の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
わきには七宝入りの紫檀したん卓に、銀蒼鷹ぎんくまたかの置物をえて、これも談話はなしの数に入れとや、極彩色の金屏風きんびょうぶは、手を尽したる光琳こうりんが花鳥の盛上げ、あっぱれ座敷や高麗縁こうらいべりの青畳に
書記官 (新字新仮名) / 川上眉山(著)
高麗縁こうらいべりの青畳の中、脇息きょうそくもたれて、眼をやると、鳥の子に百草の譜を書いた唐紙、唐木に百虫の譜を透かし彫にした欄間らんまぎょくを刻んだ引手やくぎ隠しまで、この部屋には何となく
将軍八代様のお湯殿ゆどの。八畳の高麗縁こうらいべりにつづいて、八畳のお板の間、御紋ごもん散らしの塗り桶を前に、お流し場の金蒔絵きんまきえの腰かけに、端然たんぜんとひかえておいでになるのが、後に有徳院殿うとくいんでんと申しあげた吉宗公で。
丹下左膳:02 こけ猿の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
旅路にも持ち歩かせているらしい高麗縁こうらいべり半畳はんだたみを土間に敷かせ、その上へ、ゆったりと、尻をすえているのである。
私本太平記:01 あしかが帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
そこは北向きで、広い床の間から白地に雲形を織り出した高麗縁こうらいべりの畳の上まで、茶室のような静かさ厳粛さがある。厚い壁を隔てて、街道の方の騒がしい物音もしない。
夜明け前:01 第一部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
雨の日の薄暗い光線は、その白地に黒く雲形を織り出した高麗縁こうらいべりの畳の上にさして来ている。
夜明け前:02 第一部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
今はそこもからッぽだ。白地に黒く雲形を織り出した高麗縁こうらいべりの畳の上までが湿けて見える。
夜明け前:03 第二部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
北の坪庭に向いたところまで行って、雨戸をすこし繰って見せると、そこに本陣の上段の間がある。白地に黒く雲形を織り出した高麗縁こうらいべりの畳の上には、雨の日の薄暗い光線がさし入っている。
夜明け前:01 第一部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)