駁撃ばくげき)” の例文
別に抗弁するのでも無ければ、駁撃ばくげきするというでも無く、樹間の蝉声せんせい、聴き来って意に入るもの無し、という調子にあしらってしまった。
連環記 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
と、僕は最後まで聞き取れなかったが、数字をもってこれを駁撃ばくげきすると、先の男が手帖てちょうを出して何か計算する。その間にまた一方から
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
かかる写実主義の愚劣であり、啓蒙けいもうとしての外に意味がないことは、前にも既に説いたけれども、なおもう一度根本的な駁撃ばくげきを加えておこう。
詩の原理 (新字新仮名) / 萩原朔太郎(著)
冗談半分の駁撃ばくげきを試みやうと思つて居たが、聞いて居る中に自然と愛好する藝術の問題に引き入れられて、自分も音樂上の熱帶趣味の類例として
新帰朝者日記 (旧字旧仮名) / 永井荷風(著)
これを俗論派と名づけて駁撃ばくげきを加え、学者の方はもっぱら西洋の唯物論によるものなれば、これを唯物派と称してその不合理なるを弁明し、つぎに
通俗講義 霊魂不滅論 (新字新仮名) / 井上円了(著)
そしてまさにこの点で彼が、彼の駁撃ばくげきを加えているヘラクリトス、エンペドクレース、アナクサゴラスのやからをいかにはるかに凌駕りょうがしているかを見る事ができよう。
ルクレチウスと科学 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
試みに彼に向つて一駁撃ばくげきを試みよ。彼は必ず反駁するか冷評するか、何かせざれば止まざるなり。
明治文学史 (新字旧仮名) / 山路愛山(著)
と早速駁撃ばくげきを加えたのが事の起りだった。十六の少年と二十二の青年だから段が違う。私はその都度つどやり込められる口惜しさに、占部牧師を訪れておしえを求めるようになった。
凡人伝 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
その根底において意味の異なる文の定義などを掲げて、駁撃ばくげきせんとするは見当違ひたるを免れず。われらのいはゆる文学は理窟の外に立つ者にて道をさいする者などに非ざるなり。
人々に答ふ (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
そして椏者あしゃの言葉のように、言うべきものを言い残したり、言うべからざるものを言い加えたりした一文が、存外に人々の注意をいて、いろいろの批評や駁撃ばくげきに遇うことになった。
片信 (新字新仮名) / 有島武郎(著)
民権論派の主義の大体を考うるに今日の民権説と少しくその趣を異にし、その立言はすべて駁撃ばくげき的よりはむしろ弾劾的に近く、道理を講述すというよりはむしろ事実を指摘するにあり。
近時政論考 (新字新仮名) / 陸羯南(著)
いつの世でも、新しく勃興ぼっこうするものには、必ずこういう痛撃が出るし、受け身になるものよりは、駁撃ばくげきするほうへ痛快がるのが、言論の世界の通有性である。かなりの識者のうちでも
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
もっと面白いのはここにビジテリアンという一類が動物をたべないと云っている。神の摂理である善である然るに何故にマットン博士は東洋流に形容するならば怒髪天をいてこれを駁撃ばくげきするか。
ビジテリアン大祭 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
人さきに駁撃ばくげきする小生ゆえ、なまじいに右ようのことを話し出し、かえって笑わるることと存じたるゆえに候。
妖怪報告 (新字新仮名) / 井上円了(著)
君が痛酷なる論文を「文学界」に掲げて余を駁撃ばくげきしたるより数日を隔てゝ君は予が家の薯汁飯を喫せり。余が君に遇ふや屡〻しば/\論駁の鋒を向けぬ。君はがうも之れにさからふことなかりし也。
北村透谷君 (新字旧仮名) / 山路愛山(著)
俊一君は躍気になって駁撃ばくげきを加えるけれど、相手は斯ういうことが専門だから到底歯が立たない。口惜しまぎれにチクリ/\と皮肉を言う。しかしそれが即座に通じないから、結局骨折り損になる。
嫁取婿取 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)