頬被ほおかむり)” の例文
(座敷は二階かい、)と突然いきなり頬被ほおかむりを取って上ろうとすると、風立つのであかりを置かない。真暗まっくらだからちょっと待って、と色めいてざわつき出す。
歌行灯 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
腰に下げた手拭てぬぐいをとって、海水帽の上からしか頬被ほおかむりをした。而して最早大分こわばって来たすね踏張ふんばって、急速に歩み出した。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
そこにあるありあふものを頬被ほおかむり
五百五十句 (新字旧仮名) / 高浜虚子(著)
何だか大根畠から首をもたげて指示ゆびさしをするようだけれど、このお話に一寸ちょっと要があるので、頬被ほおかむりをはずして申しておく。
遺稿:02 遺稿 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
頬被ほおかむりをしていなすった。あのその、私の手を取ったまま——黙って、少し脇の方へ退いた処で、(何を泣く、)って優しい声で、その門附が聞いてくれます。
歌行灯 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
……つい目のさきの軒陰に。……白地の手拭てぬぐい頬被ほおかむり、すらりとやせぎすな男の姿の、軒のその、うどんとべにで書いた看板の前に、横顔ながら俯向うつむいて、ただ影法師のようにたたずむのがあった。
歌行灯 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
時に、ひっそりした横町の、とある軒燈籠の白いあかりと、板塀の黒い蔭とにはさまって、ひらたくなっていた、頬被ほおかむりをした伝坊が、一人、後先をみまわして、そっと出て、五六歩行過ぎた、早瀬の背後うしろへ、……抜足で急々つかつか
婦系図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
……頬被ほおかむりしたお百姓、空籠からかごにのうて行違ゆきちがう。
南地心中 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)