せい)” の例文
旧字:
鍔ぜり合いは、どう極致きょくちせい……こうなると、思いきり敵に押しをくれて、刀を返しざま、身を低めて右胴を斬りかえすか。
丹下左膳:02 こけ猿の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
元来はせいであるべき大地だいちの一角に陥欠かんけつが起って、全体が思わず動いたが、動くは本来の性にそむくと悟って、つとめて往昔むかしの姿にもどろうとしたのを、平衡へいこうを失った機勢に制せられて
草枕 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
おもての色は変へたれども、胸中無量の絶痛は、少しも挙動にあらはさで、渠はなほよくせいを保ち、おもむろにその筒服ズボンを払ひ、頭髪のややのびて、白きひたいに垂れたるを、左手ゆんでにやをら掻上かきあげつつ
海城発電 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
ただ身の布団に触れる所のみがわが世界であるだけに、そうしてその触れる所が少しも変らないために、我と世界との関係は、非常に単純であった。全くスタチック(せい)であった。
思い出す事など (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
しらべて見ると「せいこれをせいとなせば心其中そのうちにあり、どうこれを心となせば性其中にあり、心しょうずれば性めっし、心滅すれば性生ず」というようなむずかしい漢文が曲がりくねりに半頁はんページばかりを
思い出す事など (新字新仮名) / 夏目漱石(著)