難波なんば)” の例文
もっと幼少の頃は、女中の背に乗って、毎日々々梅田うめだ難波なんばの停車場や踏切ふみきりへ、汽車を眺めるべく、弁当を持って出張に及んだものである。
めでたき風景 (新字新仮名) / 小出楢重(著)
原士はらしの中で、有名な使い手だけあって、難波なんばぽうりゅうと覚しき太刀筋はたしかなもの。弦之丞とて、迂濶うかつにはあしらえない。
鳴門秘帖:01 上方の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
牧師くずれの男もいれば、商人の息子もいた。彼らの「神様」はクロポトキンであり、大杉栄であるらしかった。難波なんば大助や朴烈ぼくれつも英雄であった。
(新字新仮名) / 壺井栄(著)
難波なんば新地へはまりこんで、二日、使い果してたましいの抜けた男のようにとぼとぼ黒門市場の路地裏長屋へ帰って来た。
夫婦善哉 (新字新仮名) / 織田作之助(著)
難波なんば駅で光子さん待ち合わして、三人で浜寺い着く時分には、夫は私のいんようになったのん気イ付いて、何はいても光子さんの家い電話かけるにきまったある。
(新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
和泉いずみ町、高砂たかさご町、住吉すみよし町、難波なんば町、江戸町の五カ町内二丁四方がその一郭で、ご存じの見返り柳がその大門通りに、きぬぎぬの別れを惜しみ顔で枝葉をたれていたところから
同じ月の十四日には大坂にも打ちこわしが始まって、それらの徒党は難波なんばから西横堀上町へ回り、天満てんま東から西へ回り、米屋と酒屋と質屋を破壊して、数百人のものが捕縛された。
夜明け前:02 第一部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
十二時四十分納竿して、二時三十分難波なんば駅着。湯へも行かずに顔を洗って、昼夜二回高座をつとめる。大阪の客は、万才めあての客が多いのと、ほとんどが団体客なのでやりにくい。
江戸前の釣り (新字新仮名) / 三遊亭金馬(著)
『そうでございました、難波なんばへ嫁にゆけというのであります。』
置土産 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
難波なんばといえるを相手の晩酌に、母も来たりて座に居しが
小説 不如帰  (新字新仮名) / 徳冨蘆花(著)
難波なんばの河か
極楽とんぼ (新字旧仮名) / 野口雨情(著)
一方は難波なんばにあって五階であり、一方は北の梅田あたりと記憶するが九階のものだった。
めでたき風景 (新字新仮名) / 小出楢重(著)
船に積んだアら、どこまで行きやアる、木津や難波なんばアの橋のしイたア……
青春の逆説 (新字新仮名) / 織田作之助(著)
午後に帰ります時分にもなるべくさそてくれるようにいいますのんで、電話で打ち合わせしといて、事務所い寄ったり、難波なんばや阪神で待ち合わしたりして、一緒に松竹座なぞい行ったりしました。
(新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
木津や難波なんばの橋の下、と哀調を帯びた子守唄を高らかに豹一にきかせた。
(新字新仮名) / 織田作之助(著)
つい無沙汰ぶさたがちに過していたと云うのは、何分師匠の住宅と云うのが天下茶屋てんがちゃやの方にあって、阪急の蘆屋からは、大阪を北から南へ突き抜けて、難波なんばから又南海電車に乗らなければならなかったし
細雪:02 中巻 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
「船に積んだアら、どこまで行きゃアる。木津や難波なんばアの橋のしイたア」
(新字新仮名) / 織田作之助(著)
それに乗って一と息に難波なんばまで行きましてん。
(新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)