間者かんじゃ)” の例文
結局は敵の間者かんじゃ細作しのびのうたがいを以って彼を館の内へ無理無体に引き摺り込もうとするらしいと、侍女は小坂部にささやいた。
小坂部姫 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
親類縁者といえども信用できず、又、信用しておらず、常時八方に間者かんじゃを派し、秘密外交、術策、陰謀は日常茶飯事さはんじだ。
家康 (新字新仮名) / 坂口安吾(著)
「さような口実でうろついておる敵の間者かんじゃは、蠅やありほど多いのじゃ。……とにかくこれは返せん、其方も一応取りただすによって、あっちまで来い」
宮本武蔵:04 火の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「役人につかまって一味ととうの片割れと思われてもつまらん、人民の方へ廻って間者かんじゃと間違われてもあぶない、だから帰る時はよく気をつけてお帰りなさい」
大菩薩峠:35 胆吹の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
てきがたの間者かんじゃかたん加担をいたしておしろに火をかけ、あまつさえおくがたをぬすみ出そうとくわだてましたとは、われながらおそろしいこゝろでござりましたけれども
盲目物語 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
いいながら、いくら間者かんじゃとしても、心にもないことを——と思いながらも、糸重は、現在、良人、良人の兄、自分を苦しめている吉良へ、こんなことまで口にして、こびを、と、ぞっとした。
元禄十三年 (新字新仮名) / 林不忘(著)
しかも彼はこれが出来ない、つとめて己の胸中を相手に知らせまいとする、しかし顔は心の間者かんじゃでいかに平気を装おうとしても必ず現われるのである。主人はいぶかしそうに彼の横顔を見詰めていた。
愛か (新字新仮名) / 李光洙(著)
「三月以来のことです」と周防が云った、「はじめは気がつきませんでしたが、密議に類することが、筒抜つつぬけに外へもれますので、注意してみると到るところに間者かんじゃが配ってあるようなのです」
「小僧のうちには、若主人の間者かんじゃをつとめているのがありますぜ」
魯八を間者かんじゃに使って雲水僧の消息を一々探り取らせた。
とと屋禅譚 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
「そのときには間者かんじゃをみちびきいれて逆襲ぎゃくしゅうしよう」
少年連盟 (新字新仮名) / 佐藤紅緑(著)
「あやしい小僧こぞうじゃ、敵国てきこく間者かんじゃであろう。おじいさまのおしろへつれて、役人の手へわたしてくれる」
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
都に近々放火砲発の手筈てはずに事定まり、其虚に乗じ朝廷を本国へ奪ひたく候手筈、かねて治定致し候処、かねて局中も右等の次第之れ有るべきやと、人を用ひ間者かんじゃ三人差出し置き
大菩薩峠:17 黒業白業の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
「スパイとおっしゃると、つまり、間者かんじゃですな」
現代忍術伝 (新字新仮名) / 坂口安吾(著)
「——もう、何年前になるか、あの六条様のお館へ、間者かんじゃに入って、捕まった年からのことです」
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「敵の間者かんじゃではないか」
大菩薩峠:05 龍神の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
伊那丸いなまる間者かんじゃがまよいこみましたと、おくのご殿てんにどなってやるのだ。待っていろ、そこで!」
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
朱柄あかえやりをもった曲者くせものが、城内の武士ぶしをふたりまで突きころしたという知らせに、さては、敵国の間者かんじゃではないかと、すぐ討手うってにむかってきたのは、酒井黒具足組くろぐそくぐみの人々であった。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「敵方の間者かんじゃに備えてであろうな」
宮本武蔵:06 空の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
間者かんじゃだな! 大坂の」
宮本武蔵:04 火の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)