錯雑さくざつ)” の例文
旧字:錯雜
数年来鬱積うっせき沈滞せる者頃日けいじつようやく出口を得たる事とて、前後ぜんご錯雑さくざつ序次じょじりんなく大言たいげん疾呼しっこ、われながら狂せるかと存候ほどの次第に御座候。
歌よみに与ふる書 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
ギゾーの古い事は言うまでもないが。ギゾーがかの錯雑さくざつした欧羅巴の歴史の事実をうまく綾にんで概括した、あの力というものは非常なものである。
今世風の教育 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
現実の発展はもっともっと複雑で、多元的な諸要因の錯雑さくざつした相互関係に立っていることを忘れてはならない。
政治学入門 (新字新仮名) / 矢部貞治(著)
本堂内の光景 どこから形容してよいかどこからいい出してよいか分らん程錯雑さくざつして居るがなかなか立派です。
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
有想の域に止って加工の重荷に悩んでいます。いわゆる上等品に見られる通有つうゆうの欠陥は技巧への腐心なのです。したがって形も模様も錯雑さくざつさを増して来ます。
民芸とは何か (新字新仮名) / 柳宗悦(著)
『オヤッ、不思議。あの女もやはり水晶の栓を探しているぞ。こりゃ事件ことがいよいよ錯雑さくざつして来たわい』
水晶の栓 (新字新仮名) / モーリス・ルブラン(著)
その殻をわる音が錯雑さくざつとはじまった。トムの手が時々、お光さんの肩の上からそれをつかんで行った。
かんかん虫は唄う (新字新仮名) / 吉川英治(著)
それは一種の反感と、恐怖と、人馴ひとなれない野育ちの自尊心とが錯雑さくざつして起す神経的な光りに見えた。津田はますますいやな気持になった。小林は青年に向って云った。
明暗 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
大河の音と欷歔の声と飛び巡る蝙蝠の羽音とが相錯雑さくざつして聞こえて来る。
神州纐纈城 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
地名は時間の区別に比して更に明瞭めいりょうなる区別なれば、俳句に地名を用うるは最簡単なる語を以て最錯雑さくざつなる形象を現はすの一良法なりといへども
俳諧大要 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
チベット政府の財政は非常に錯雑さくざつしてよく分りかねるのみならず、政府の会計官吏が年々どれだけ収入してどれだけ支出するのか、側の者にはさっぱり分らない。
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
技巧の不必要なる跳梁ちょうりょうです。形態は錯雑さくざつとなり、色彩は多種になり、全体として軟弱な感じを免れることができません。これも明かに一種の病状を示した藝に過ぎないのです。
民芸の性質 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)
世の中にこれほど錯雑さくざつした配合はない、これほど統一のある配合もない。これほど自然で、これほどやわらかで、これほど抵抗の少い、これほど苦にならぬ輪廓は決して見出せぬ。
草枕 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
それはもう、鈴野の寝息のかおりを肌に感じさせるに足るものだった、彼の手は、恐ろしいものと、甘い夢みる興奮とに、錯雑さくざつはやりおののきながら、ついに、板戸の引手をさぐり当てた。
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
政府の組織 次に法王ほうおう政府の組織に移ります。法王政府は非常に錯雑さくざつして居りますので充分じゅうぶんに述べることは困難である。ことに私はそういうことを専門に調べたのでない。
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
成就せしめんとする大檀那おおだんなは天下一人もなく数年来鬱積うっせき沈滞せるもの頃日けいじつようやく出口を得たることとて前後ぜんご錯雑さくざつ序次じょじりんなく大言たいげん疾呼しっこ我ながら狂せるかと存候ほどの次第に御座候。
歌よみに与ふる書 (新字新仮名) / 正岡子規(著)
鷲抓わしづかみに引っくるめてその特色を最も簡明な形式で頭へ入れたいについてはすでに幼稚な頭の中に幾分でも髣髴ほうふつできる倫理上の二大性質——善か悪かをりきめてこの錯雑さくざつした光景を
中味と形式 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
嘈々切々 錯雑さくざつだんずれば
宮本武蔵:05 風の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)