鉦太鼓かねたいこ)” の例文
夜通し鉦太鼓かねたいこを鳴らしていた屋敷のうちが、今はひっそりとして空家あきやかと思われるほどである。門のとびらとざしてある。
阿部一族 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
夜が白むと、鄴都ぎょうとの街には、鉦太鼓かねたいこの音がやかましかった。于禁うきん一族や七手の大将が、それぞれ出陣する触れである。
三国志:09 図南の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ことに林相りんそう零落れいらくが目に立つようになると、雨乞あまごい鉦太鼓かねたいこが一段と耳に響く土地柄でもあった。
海上の道 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
五日は仙台市の祝勝日で、この朝、十時、愛宕山あたごやまに於いて祝砲一発打揚げたのを合図に、全市の工場の汽笛はうなり、市内各駐在所の警鐘および社寺備附そなえつけの梵鐘ぼんしょう鉦太鼓かねたいこ
惜別 (新字新仮名) / 太宰治(著)
また奥方様おくがたさまをくはせる……あまつさへ、いま心着こゝろづいて、みゝませてけば、われみづからも、ごろでは鉦太鼓かねたいここそらさぬけれども、土俗どぞくいまる……天狗てんぐさらはれたものをさが方法しかた
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
弥五兵衛、市太夫、五太夫、七之丞の四人が指図して、障子ふすまを取り払った広間に家来を集めて、鉦太鼓かねたいこを鳴らさせ、高声に念仏をさせて夜の明けるのを待った。
阿部一族 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
投げ出す旦那様は鉦太鼓かねたいこでさがしたってあるもんか
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)