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這麼事
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こんなこと
這麼事を考へながら茸を味つてゐると、今日
此頃ついぞ物を味ひしめるといふ程の
余裕が無くなつてゐたのに気が付いた。
『
打明けて
申しますとな、エウゲニイ、フエオドロヰチもう
私は
疾うから
這麼事になりはせんかと
思つてゐましたのさ。』
這麼事を
恐れるのは
精神病に
相違なき
事、と、
彼も
自ら
思ふて
是に
至らぬのでも
無いが、
偖又考へれば
考ふる
程迷つて、
心中は
愈々苦悶と、
恐怖とに
壓しられる。
が、
若し
這麼事を
女主人にでも
嗅付けられたら、
何か
良心に
咎められる
事があると
思はれやう、
那樣疑でも
起されたら
大變と、
彼はさう
思つて
無理に
毎晩眠た
振をして、
大鼾をさへ
發いてゐる。