“近(ちこ)” の例文
「どれ。」といひて立つたる折、のしのしと道芝(みちしば)を踏む音して、つづれをまとうたる老夫(おやじ)の、顔の色いと赤きが縁(えん)近(ちこ)う入(はい)り来つ。
竜潭譚 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
治「ヘヽ僕は間(ひま)さえ有れば、近(ちこ)う御座いますから、来たくなるとスイと参ったり、別に用もない時は大概来て居ります」
霧陰伊香保湯煙 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
そういう様子をながめながら、家康(いえやす)はまた、近(ちこ)う、とかれをまぢかく呼(よ)んで
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「ほほう、家重代とは勿体(もったい)つけおったな。きこうぞ。きこうぞ。急に何やら陰(いん)にこもって参って、きかぬうちから襟首が寒うなった。離れていては気がのらぬ。来い、来い。みな、もそっと近(ちこ)う参って、ぐるりと丸うなれ」
十万石の怪談 (新字新仮名) / 佐々木味津三(著)
「もっと近(ちこ)う参れ、盃を取らせるぞ」
家へは近(ちこ)うござります、何処(どこ)か外(ほか)から這入口(はいりぐち)はなかろうかと横手に廻って見ても外に入口(いりくち)はない様子、暫(しばら)く門の処に立って内の様子を窺(うかゞ)っていると、丁度一角が寝酒を始めて
真景累ヶ淵 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
右「喜代之助、近(ちこ)う進め」
後の業平文治 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)