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赤茶釜
其の
町の、
奧を
透かす
處に、
誂へたやうな
赤茶釜が、
何處かの
廂を
覗いて、
宙にぼツとして
掛つた。
時々梢から、(
赤茶釜)と
云ふのが
出る。
目も
鼻も
無い、
赤剥げの、のつぺらぽう、三
尺ばかりの
長い
顏で、
敢て
口と
云ふも
見えぬ
癖に、
何處かでゲラ/\と
嘲笑ふ……
正體は
小兒ほどある
大きな
梟。
「
今も
居るか、
赤茶釜。」と
思ふのが、つい
聲に
成つて
口へ
出た。