贋金にせがね)” の例文
中は贅を尽しておりますが、至って簡単で明るくて、贋金にせがね等を造る場所があろうとも思えず、そんなものを貯えておく様子もありません。
今時の贋金にせがねまで一通り盗み並べてみたが、これもホンの見本調べをやってみただけのもので、もうそれだけの知識を備えたから
大菩薩峠:24 流転の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
そして不幸にも既に言語の通貨となりすましてしまったならば贋金にせがねを根絶することに必死の努力を払うべきである。失望するには当らない。
外来語所感 (新字新仮名) / 九鬼周造(著)
ところが、一昨日までは五万円の贋金にせがねを一度も使用しませんでしたが、一昨日の朝、社長はわたしにそのうち二千円を出してくれと申しました。
なんと成木持助でござるぞ、保良郡の豪家たる権右衛門ごんえむ殿のむすめ婿になりそこね、婚礼の席から逃亡した贋金にせがね作り、闇七こと成木持助でござる。
「まあまあ、そうご立腹をなさるな。……それはそうと、いまさっき、なにかしきりにコソコソやっていられたが、贋金にせがねでもつくっていたのですか」
「てめえがいつまでも強情を張るなら、おれの方から云って聞かせる。あの甚右衛門という奴は正直な田舎者のように化けているが、あいつは確かに贋金にせがね遣いだ」
半七捕物帳:28 雪達磨 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
……なうなう、ロミオのきみ、えへん、bonjourボンジュール! これはフランスしき細袴ほそずぼんたいしてのフランスしき御挨拶ごあいさつでござる。昨夜ゆうべは、ようも巧々うま/\贋金にせがねつかませやったの。
それもその金が贋金にせがねかどうかと、いちいち人の面前でしらべてからでなけれや、通用しないよ。
上海 (新字新仮名) / 横光利一(著)
「その口を忘れるなよ、梅忠じゃねえけれど、贋金にせがねじゃねえから目をつぶすな」
醤油仏 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
またアンドレ・ジイドは「贋金にせがねつくり」によって、近代劇的な額縁の中で書かれていた近代小説に、花道をつけ、廻り舞台をつけ、しかもそれを劇と見せかけて、実はカメラを移動させれば
可能性の文学 (新字新仮名) / 織田作之助(著)
これはずっと後で聞いた話であるが、この喜いちゃんの御父おとっさんというのは、むかし銀座の役人か何かをしていた時、贋金にせがねを造ったとかいう嫌疑けんぎを受けて、入牢じゅうろうしたまま死んでしまったのだという。
硝子戸の中 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
お金は、それでもいくらか持っているようだし、現金払いなら、こちらは客商売、まあ、ごゆるりと遊んでいらっしゃい。とにかく、この一歩金、いただいて置きましょう、贋金にせがねでもないようだ。
新釈諸国噺 (新字新仮名) / 太宰治(著)
伝兵衛に贋金にせがねつかひの悪名を負はせ、打擲ちょうちゃくをなす。
両座の「山門」評 (新字旧仮名) / 三木竹二(著)
贋金にせがねではない、使える小判」
任侠二刀流 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
中は贅を盡して居りますが、至つて簡單で明るくて、贋金にせがね等を造る場所があらうとも思へず、そんなものをたくはへて置く樣子もありません。
「これは、——」封を切って小判を出すなり益造旦那は汽笛のようにほえた、「これはどうだ、いやいけない、贋金にせがねだ」
事実、この中へ、いっぱいの金銀が入っているなら——金銀でなく、贋金にせがねであっても、これへいっぱい詰められていた日には、一人や二人の手では、ちょっと始末にゆかない。
大菩薩峠:24 流転の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
おとといから昨日きのうへかけて、日本橋で二軒、京橋で一軒の大きい両替屋へ外国のドルを両替えに来た者がある。全体の金高は十二三両であるが、あとで調べてみると其の三分の二は贋金にせがねである。
半七捕物帳:52 妖狐伝 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
ロミオ 二人ふたりともおはやうござる。なに、贋金にせがねとは?
「ごらんなさい、ゆうべの二両は贋金にせがねです」
「そのくせ、弟子どもと一緒に夜更けまでゴトゴトやっているそうですよ。謀叛人でなきゃ、贋金にせがね造り、そんなとこじゃありませんか、親分」
その刹那せつなである、持助殿の口が盃へ触れようとした、ちょうどその刹那に、「贋金にせがね——」という叫びが起こった
慶長小判から今時いまどき贋金にせがねまで、両がえ屋の見本よろしくズラリと並べた上、この近所の地面を買いつぶして、坪一両あてにして何百両、それに建前や庭の普請を見つもってこれこれ
大菩薩峠:24 流転の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
「証拠は一つもない。贋金にせがねが一つでもあの家にあれば縛れるが、——でなきゃ、あの晩、直助が外へ出たと判れば——」
「證據は一つもない。贋金にせがねが一つでもあの家にあれば縛れるが、——でなきや、あの晩、直助が外へ出たと判れば——」
贋金にせがね使いに掛り合って、親方の南左衛門は死罪、一座の者は遠島、追放、所構ところがまえとバラバラになってしまいました。
贋金にせがね使ひに掛り合つて、親方の南左衞門は死罪、一座の者は遠島、追放、所構ところがまへとバラバラになつてしまひした。
「忘れちやいけませんよ。近頃御府内にチヨイチヨイ贋金にせがねが現はれるんで、その犯人を擧げた者には、大層な御褒美を下さるといふ御觸おふれぢやありませんか」
「忘れちゃいけませんよ。近ごろ御府内にチョイチョイ贋金にせがねが現れるんで、その犯人を挙げた者には、たいそうな御褒美を下さるという御触れじゃありませんか」
忘れもしないそれは、今日鈴ヶ森の処刑場おしおきばで打ち落した首の一つ、死に際まで生の執着にもがき抜いて、一番醜い、一番物凄い最期を遂げた、贋金にせがね使いの男の首だったのです。
「大きな事を言やがる。まさか、銅脉(贋金にせがね)を拵へる相談ぢやあるまいな」
贋金にせがねを使って遠島になりましたが、事件が店の外で起ったのと、升屋の顔がよかった上、相当以上の金を使ったので、店には何のきずも付かず、簡単なお叱りだけで事済みになったことがあります。
一番物凄い最期さいごげた、贋金にせがね使ひの男の首だつたのです。