贄川にえがわ)” の例文
もっとも、木曾の上四宿からは贄川にえがわの庄屋、中三宿からは福島の庄屋で、馬籠まごめから来た半蔵は下四宿の総代としてであった。
夜明け前:02 第一部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
贄川にえがわ、洗馬も過ぎて、ふもとの宿場までかかると、すでに陽はかげって、夕煙の這う往来に、軒ごとの燈火ともしびが、春のくれながら、なんともいえない山国のわびしさをまたたいている。
宮本武蔵:06 空の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
桜沢、若神子わかみこ贄川にえがわ、平沢の諸駅、名前だけはく耳にしていた。桜沢以西は既に西筑摩郡で、いわば前木曾ともいうべき処である。これらの村々から松本の町へ出て来る学生がある。
木曽御嶽の両面 (新字新仮名) / 吉江喬松(著)
それがあとの贄川にえがわだか、峠を越した先の藪原やぶはら、福島、上松あげまつのあたりだか、よくはかなかったけれども、その芸妓げいしゃが、客と一所に、鶫あみを掛けに木曾へ行ったという話をしたんです。
眉かくしの霊 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
寺尾等秩父郡の村々には氷雨塚と称うるものはなはだ多く、大野原には百八塚などいうものあり、また贄川にえがわ、日野あたりには棒神と唱えて雷槌いかずちを安置せるものありと聞きしまま、秩父へ来し次手ついでには
知々夫紀行 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
彼が贄川にえがわや福島の庄屋しょうやと共に急いで江戸を立って来たのは十月下旬で、ようやく浪士らの西上が伝えらるるころであった。
夜明け前:02 第一部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
このあたりも火の燃えるような勢いに乗じて、贄川にえがわはその昔は、煮え川にして、温泉いでゆの湧いた処だなぞと、ここが温泉にでもなりそうな意気込みで、新館建増しにかかったのを、この一座敷と
眉かくしの霊 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
あの土屋総蔵なぞは赴任して来ると、すぐ六人の官吏を連れて開墾その他の見分けんぶんにやって来たからね。あの時の見分は、贄川にえがわから妻籠、馬籠まで。
夜明け前:03 第二部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
「さあ、これから御奉行さまの前だ。」と贄川にえがわの平助は用心深い目つきをしながら、半蔵のそでをひいた。
夜明け前:02 第一部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
木曾十一宿はおおよそ三つに分けられて、馬籠まごめ妻籠つまご三留野みどの野尻のじりしも四宿といい、須原すはら上松あげまつ福島ふくしまなか三宿といい、みやこし藪原やぶはら奈良井ならい贄川にえがわかみ四宿という。
夜明け前:01 第一部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
いよいよ来たる五月十二日を期して、贄川にえがわ藪原やぶはら王滝おうたき馬籠まごめの四か村から出るものが一同に代わって本庁の方へ出頭するまでの大体の手はずをきめる。彼も心から汗が出た。
夜明け前:04 第二部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
いよいよ来たる五月の十二日を期して再度の嘆願書を差し出すことから、その前日までに贄川にえがわに集まって、四人の総代だけが一同に代わり松本へ出頭するまでの手はずもまった。
夜明け前:04 第二部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
いずれ土屋権大属ごんだいぞく帰庁の上で評議にも及ぶであろう、それまではまずまず預かり置く、そんな話で、王滝おうたき贄川にえがわ藪原やぶはらの三か村から出た総代と共に、半蔵は福島出張所から引き取って来た。
夜明け前:04 第二部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
この九太夫は、平素自分から、「馬籠の九太夫、贄川にえがわ権太夫ごんだゆう
夜明け前:01 第一部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)